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トミー・ジョン手術3回の館山昌平が1億円プレーヤーを10年間経験してわかったお金よりも大事なこと (3ページ目)

  • 元永知宏●文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Sankei Visual

── 時代が変わり、プロ野球選手の年俸が上がったとはいっても、1億円に乗せるのは大変なことです。

館山 1億円プレーヤーとして、名前が残ることはいいですよね。どの世代に人にも認知してもらえるので。僕はそれを10年続けることができました。小学1年生が10年経ったら高校生になりますよね。その間ずっと、1億円プレーヤーでいられたんですから。

── 現役引退後にもそれは生きていますか?

館山 プロ野球選手の特権というか、利点は、大きな会社の社長やすばらしい業績を残した経営者にも会えること。会うこと自体が難しい人に、自分のやりたいことを伝えることができる。それが一番ですね。僕はプロ野球でいくら稼いだかよりも、これから何をするかのほうが大事だと考えています。「館山はこれから何をやるんだ?」と楽しみにしてもらいたいですね。

── 館山さんにとって、お金よりも大事なものはありますか。

館山 時間でしょうね。引退したあと、家族旅行にはお金を使いました。モルディブとかハワイとかでゆっくり過ごしました。現役時代は留守にすることが多かったけど、やっと家族と思い出を共有できたかな。

 それ以外にも大事なものは、経験、仲間......いろいろありますね。僕は今、双葉町の復興事業に携わっています。浜通りと呼ばれる、津波の被害があったところを拠点に、復興活動、野球振興に力を入れています。僕は野球の力を信じているので、野球を通じて、みんなが集まれる場所をつくりたい。館山が関わることで、「変わったな」と思ってもらえるように。

館山昌平(たてやま・しょうへい)/1981年3月17日、神奈川県生まれ。日大藤沢高では3年春にセンバツベスト4。日大に進学し、2002年ドラフト3位でヤクルトに入団。04年にトミー・ジョン手術を受け、1年間のリハビリを経て05年に復活。初の2ケタ勝利を挙げる。09年には16勝で最多勝のタイトルを獲得。13年シーズン途中にまたしてもトミー・ジョン手術を受け長期離脱。15年に復帰を果たし、チームの優勝に貢献するなどカムバック賞に輝いた。19年限りで現役を引退し、楽天の二軍投手コーチを2年間務め、22年から福島レッドホープスの投手チーフコーチに就任した。

  『プロ野球で1億円稼いだ男のお金の話』

昭和のプロ野球では年俸1000万円がスーパースターの証だった。それが3000万円になり、1億に上がっていき、現在では、5億円以上の年俸を稼ぐプロ野球選手がいる。 

 しかし、プロ野球選手には寿命がある。どんなすばらしいスターも衰えとは無縁ではない。能力が年俸に見合わないと判断されればユニフォームを脱ぐことになる。そのときには当然、年俸はゼロになる。プロ野球以上に稼げる世界などどこにもない。 

 本企画ではプロ野球で「天国と地獄」を経験した元プロ野球選手に登場してもらい、お金にまつわる様々な話を徹底的に聞いていく。 

 たとえば……契約金はどこへ消えるのか? 「グラウンドに銭が落ちている」は本当か? なぜ大金は身につかないのか? 誰も教えてくれない税金の怖さ、成績不振でも年俸を下げない方法、絶対に認められない必要経費、誰もが行きたいあの球団、そして、お金よりも大切なものは何か? 

 現役を引退し、さまざまな仕事を経験したからこそ語ることができるプロ野球のお金の話——彼らの笑える話、泣ける話、ためになる話を1冊に!

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