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【ワールドカップ】サッカー日本代表がはき違えた「一体感」 ベスト8進出国が示した「個」の結束

  • 小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya

「一体感があった」「みんな同じ絵を描いていた」......北中米ワールドカップを戦った森保ジャパンの周辺からは、「結束」が漏れ伝わってくる。

 確かにチームとしてのまとまりはあった。それぞれが森保一監督の戦術を尊重しながら、チームのために献身的に働いていた。長友佑都のようなムードメーカーが歓迎され、選手同士は仲がよさそうで、雰囲気も明るかった。ひとつになった堅牢さは評価されるべきだ。

 では、「ワールドカップ優勝」に向かって束ねられた集団が、ベスト32で力尽きたのはなぜだろうか?

 ワールドカップのベスト8を巡る戦いは、「一体感」の正体を示していた。

準々決勝で優勝候補の筆頭、フランスに挑むモロッコ代表の選手たち photo by JMPA準々決勝で優勝候補の筆頭、フランスに挑むモロッコ代表の選手たち photo by JMPA たとえば、パラグアイはラウンド16でフランスと戦い、5バックで守りを固めて相手を苦しめ、「ひとつの岩」のような結束を見せていた。しかし、最後はこじ開けられてしまい、反則まがいのラフプレーの印象を残して大会を去った。ボールを持つことを捨てたことの報いを受けたのだ。

 フランスなど、ベスト8に勝ち残った国々に共通する「一体感」は、「献身」でも「仲のよさ」でもない。それは攻防のなか、「ゴールに向かう姿勢」に尽きるのではないか。

 サッカーの原点とも言えるゴールの意識こそ、彼らの活力になっている。言うまでもなく、試合のなかで相手の流れになる時間帯はあるわけだが、守りに入っても腰が引けていない。むしろ逆境を楽しむような不敵さで、反撃にも転じられるのだ。

 モロッコはノックアウトステージに入ると、日本が引き分けたオランダを退け、開催国のカナダも破った。その点でベスト8にふさわしい。

 今回のモロッコ代表に、実は同国内で生まれ育った選手は少ない。多くが欧州への移民の末裔である。アクラフ・ハキミ、ブラヒム・ディアス、シャディ・リアドはスペイン生まれ。ニール・エル・アイナウイ、イッサ・ディオプ、アユブ・ブアディはフランス、ヌサイル・マズラウィはオランダで生まれた。代表選手のなかにはボートピープルで夢をつないだ移民の子孫もいた。そうして散らばっていた個人が、野心をむき出しに「前に進むこと」で結束したのだ。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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