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中田翔以来の衝撃 大阪桐蔭のスーパー1年生・森陽樹が語る佐々木朗希への憧れと夢 (4ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro

【高校時代の才木浩人を彷彿】

 森は、近畿大会決勝の京都外大西戦では公式戦初先発も経験。はたして先発でどんなピッチングを見せるのか注目していたが、自身最長となる7回を投げ、3安打無失点、9奪三振。近畿大会で履正社(大阪)から10点を奪って勝ち上がってきた打線を楽々と封じた。

 リリーフの時は勢い余ってフィニッシュで体が反転することがあったが、この日は力感を少し抑え、最速は148キロ。それでもキレのあるストレートを軸に圧倒した。

 森のピッチングを繰り返し見るうちに、サイズ感、シルエット、ボールの質、タイプといった点で重なってきたのが、高校時代の才木浩人(現・阪神)だ。須磨翔風高(兵庫)3年時、ブルペンで見た才木のストレートは今も強烈なインパクトとして残っている。きれいな縦回転で体を使い、指にかかった時のストレートは、低めがまったく垂れずにキャッチャーのミットを突き上げた。

 並んで観戦していた阪神の熊野輝光スカウトが「モノが違う」と絶賛し、帰り道でも才木の話題で持ちきりだった。

 才木は縦のズレはあっても横のズレが少なく、大型の速球派ながら制球は安定していた。森のストレートも、この球速ながら暴れることはなく、近畿大会では計10イニングを投げて四球はわずか1。ストライク先行が目立ち、常にホームベース近辺にボールが集まる。

 決勝のあと、森にどんなストレートが理想か尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「相手バッターが真っすぐとわかっていてもバットに当たらない、空振りをとれるボールです」

 同じようなセリフを2年前の前田からも聞いたことがあるが、森は近畿大会で奪った16個の三振のうち、ストレートでとったものは12個。そのうち9個が空振りだった。ストレートに関しては、同時期の前田を上回っていると言ってもいいだろう。

 今年も大阪桐蔭にはエース・平嶋桂知(ひらしま・かいち)を筆頭に好投手が揃うなか、「令和の怪物」に憧れる森が、神宮大会でどんなピッチングを見せてくれるのか。

「まだ1年の秋ですから」

 周囲の盛り上がりを抑えるように、森の話題には控えめな反応が続く西谷監督だが、ここからまた16歳の右腕のゴールを頭に置きながら、目の前の勝利を求める日々が続いていく。2年後の秋、森は、そして西谷監督は何を語っているのだろうか。全国デビューの前からそんなことまで思わせる男──それが森陽樹である。

著者プロフィール

  • 谷上史朗

    谷上史朗 (たにがみ・しろう)

    1969年生まれ、大阪府出身。高校時代を長崎で過ごした元球児。イベント会社勤務を経て30歳でライターに。『野球太郎』『ホームラン』(以上、廣済堂出版)などに寄稿。著書に『マー君と7つの白球物語』(ぱる出版)、『一徹 智辯和歌山 高嶋仁甲子園最多勝監督の葛藤と決断』(インプレス)。共著に『異能の球人』(日刊スポーツ出版社)ほか多数。

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