阪神のドラ1投手からホームラン 富士大・麦谷祐介は「球場の全員がオレのことを見てるだろ」の強メンタルで目指すはプロ一本
【早くもプロ一本を明言】
試合後の囲み取材中、「全国大会に強いですよね?」と尋ねると、麦谷祐介(富士大3年)は「大好きです」と誇らしげにうなずき、こう続けた。
「僕ら地方のリーグなんで、これだけ人が集まることもあまりないので燃えますね。『球場の全員がオレのことを見てるだろ』と思ってプレーしています」
初戦の上武大戦で第1打席にレフトオーバーの二塁打を放った富士大・麦谷祐介 photo by Kikuchi Takahiroこの記事に関連する写真を見る この日、麦谷の所属する富士大は明治神宮大会の初戦で上武大と対戦し、1対0で勝利していた。麦谷は1打席目でレフトオーバーの二塁打を放っている。
麦谷は左打者であり、球場中にとどろくインパクト音と左翼フェンス手前でレフトのグラブを弾き飛ばす打球の勢いは見る者に強い印象を残した。ただし、麦谷はこの一打に満足していなかった。
「あれを(スタンドに)入れるのが、上に行く選手なのかな......と思います」
2023年のドラフト会議が終わったということは、2024年のドラフト戦線が幕を開けたことを意味する。麦谷は早くも「プロ一本」と明言するほどのプロ志望の意思が強い外野手である。
大崎中央高(宮城)の頃から、その快足ぶりは注目を集めていた。富士大では光電管センサーによる50メートル走を計測したところ、5秒8台の驚異的なタイムを叩き出している。
今年6月に実施された大学日本代表選考合宿も同じ形式で50メートル走を計測しているが、参加野手でトップだった宮崎一樹(山梨学院大→日本ハム3位)と飯森大慈(明治大3年)のタイムが5秒94だった。同合宿に招集されていない麦谷のスピードがいかに速いか伝わるだろう。
富士大の安田慎太郎監督からは「今プロにアピールすべきは足と肩」と評価されてきた。残す課題は打撃面だが、それでも大学3年間で大きく前進している。
【阪神ドラフト1位から本塁打】
大学2年時に73キロだった体重が今や80キロまで増え、安田監督から「左ヒジで押し込む打撃を教わった」(麦谷)ことで左方向への打球が伸びるようになった。今年6月の大学選手権準決勝では、下村海翔(青山学院大→阪神1位)から左中間スタンドに放り込んでいる。また、体重が増えたといっても、本人が「足の速さは落ちないようにしている」と語るように個性は損なわれていない。
1 / 2
著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。