高校入学時は最速107キロの投手、大学時代に引退勧告を受けた強打者...BC群馬からNPB入りを目指す非エリートの挑戦 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

昨季BCリーグの首位打者に輝いた群馬ダイヤモンドペガサスの奥村光一昨季BCリーグの首位打者に輝いた群馬ダイヤモンドペガサスの奥村光一この記事に関連する写真を見る だが、「プロに行きたい」という夢はあきらめきれなかった。知人のツテをたどってダイヤモンドペガサスのトライアウトを受験し、練習生からスタート。前出の井野口、速水ら屈強な右打者の影響を受け、長打力に磨きをかけた。選手契約を勝ちとると、昨季はBCリーグで打率.372をマーク。首位打者に輝いている。

 西武ファームとの試合では、3番・ライト(途中からセンター)で出場。打席に入る前、奥村はルーティンとして素振りを2回する。「ブン!」と豪快な風切り音がすると、三塁側の西武ベンチから「おぉ〜」と驚きの声があがった。ほかの打者からはそのような音は聞こえず、明らかに異質なスイング音だった。客観的に見ても西武ベンチの反応は純粋な驚嘆に思えたが、奥村はそうとらえていなかった。

「なめられてるな......と思って、あれで自分のなかで火がつきました」

 第1打席は赤上優人から強烈なレフトライナーを放つと、空振り三振を挟んで3打席目に左中間フェンス直撃の適時二塁打。瞬発力とパワーを兼ね備えた打撃を見せつけた。今季リーグ31試合で18盗塁(6月20日現在)の俊足、馬力を生かした強肩もあり、ただ打つだけの選手ではない。

「今年は速水さんと自主トレをしてフォームもマネしたんですけど、開幕戦でホームランを打ったあとは対策されたこともあってタイミングが合わなくて。『自分に合う形があるな』とフォームを変えて、調子は戻ってきました。でも、変化することは怖くないので、自分が伸びると思えばこれからもどんどん変えていきます。昨日の自分よりよくなっていきたいんです」

 奥村に対する牧野監督の期待も大きい。

「もっとうまくなりたいという探究心があって、素直です。体のパワーとスピードはあるので、あとは柔らかさが出てくれば。プレーに軽やかさが出て、今よりも見栄えがよくなるはずです。簡単なことではありませんが、追求してもらいたいですね」

 虎視眈々とドラフト指名を狙っているのはエリートだけではない。今年で西濱は20歳、奥村は23歳を迎える。群馬で光を放つ若馬たちは、空高く舞い上がる日を心待ちにしている。

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