高校入学時は最速107キロの投手、大学時代に引退勧告を受けた強打者...BC群馬からNPB入りを目指す非エリートの挑戦 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

将来の夢はMLBでサイ・ヤング賞

 西濱は高校時代、「24歳までに161キロを出して、将来はMLBでサイ・ヤング賞を獲りたいです」と壮大な夢を語っていた。

 地元の独立リーグ球団である群馬ダイヤモンドペガサスに入団後は、牧野塁監督のもと基礎づくりに励んだ。自身も投手としてオリックスなど4球団を渡り歩き、NPB通算222試合に登板した牧野監督は言う。

「段階を踏んで、少しずつステップアップしています。まだ試合で球数を多くは投げていませんが、徐々に球数を増やして経験を積んでいます」

 ダイヤモンドペガサスと言えば、今季で37歳になったベテラン強打者の井野口祐介が在籍。昨季育成2位指名を受けて日本ハム入りした速水隆成など、筋力トレーニングに熱心な選手が多い。当初は「ウエイトトレーニングをやらずに成功したい」と考えていた西濱だったが、自身の力不足を痛感してウエイトトレーニングに取り組むようになった。昨季終了時に77キロだった体重は、一時87キロまで増えた。シーズン中の現在は82〜83キロまで減っているが、「増やしても体は重く感じないし、もっと増やしたい」と西濱は言う。

 そして、西濱は語気を強めてこう宣言した。

「今年は絶対にNPBに行きたいんです。高校時代も昨年もNPB球団から調査書すらもらえなかったので、今年はまず調査書を1枚もらいたいですね」

 牧野監督は西濱がさらにレベルアップするための課題をこのように語る。

「モノはいいので、あとはムラを小さくできるか。今日も154キロが出たと思ったら、次のボールは144キロだったり。いいボールの再現性が出てくれば、評価はさらに上がるはずです」

練習生からドラフト候補に

 BCリーグ選抜でアピールに成功したのは、西濱だけではない。同じくダイヤモンドペガサスの外野手・奥村光一も持ち前の強打で存在感を示した。

 奥村は東海大静岡翔洋に所属した高校時代、右のスラッガーとして静岡県内では知られた存在だった。だが、東海大では出場機会に恵まれず、大学3年の進路相談時に「就職したほうがいい」と引退勧告を受けた。奥村は「リーグ戦のベンチに入る見込みがなかったんです」と振り返る。

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