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「バカヤロー!」のひと言で本気モードに 唐川侑己の"怒り"の快速球を受け止めた日 (4ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Masahiko Abe

 向こうがケンカのつもりで投げてくるから、こっちだって引くわけにはいかない。すごいテンポで投げ込んでくるから、ついムキになって「さあ、いくらでも来い!」と、カラ元気で応戦だ。

 やさしそうな顔をして、その気になったら恐ろしいほど牙を剥いてくるヤツ。なんだかんだで、ホームベース上で外に吹っ飛ぶスライダーも含め、40〜50球ほど。

「監督さん、このピッチャー、すごい根性してますね」

 終わったあと、息も絶え絶えに呆れていたら、尾島監督はこう返してきた。

「あいつ、本気になったら、ほんとすごいボール投げますから。もう手がつけられないですよ。あっ、いけね。それ、安倍さんに言うのを忘れてた(笑)」

 早く言ってほしかったが、それにしても秋のドラフト1位を確信した、とんでもなくすごいボールだった。

【19年目のシーズンに突入】

「いつも穏やかだし、ウチの日本人選手では角中(勝也)の次に年長なのに、まったく偉ぶったところがない。ちゃんと若いヤツの面倒も見ているし、人望もあってね。ああいう存在がいてくれると、チームとしてほんとにありがたい」

 ロッテ生え抜きの球団関係者が感心したように話す様子にも、まるで"濁り"がない。

 先発ローテーションから、役割をリリーフに替え、昨年までマリーンズ一筋18年で、通算82勝77敗64ホールド。コツコツと実績を積み重ねて、今季19年目のシーズンに突入した。

 たしかに、セカンドキャリアを語られる時期になっているのかもしれない。「高校BIG3」のうち、佐藤と中田はすでに現役を引退した。

 ただ、唐川はまだまだやりきっていない印象を受ける。外野のポール間を疾走するリズミカルな弾力に、「レジェンド」などと呼ばれるのはまだ早い──フレッシュな余力を感じた。


唐川侑己(からかわ・ゆうき)/1989年7月5日生まれ、千葉県出身。投手。成田高校では2年春、3年春の選抜に出場。大阪桐蔭の中田翔、仙台育英の佐藤由規とともに「高校ビッグ3」として注目を集め、2007年高校生ドラフト1巡目でロッテに入団。プロ1年目に初登板初勝利を挙げるなど、早くから先発ローテーションの一角として活躍。11年には12 勝をマークした。近年はリリーフとしても存在感を発揮し、精密なコントロールとキレのある変化球でロッテ投手陣を支える。

著者プロフィール

  • 安倍昌彦

    安倍昌彦 (あべ・まさひこ)

    1955年、宮城県生まれ。早稲田大学高等学院野球部から、早稲田大学でも野球部に所属。雑誌『野球小僧』で「流しのブルペンキャッチャー」としてドラフト候補投手のボールを受ける活動を始める。著書に『スカウト』(日刊スポーツ出版社)『流しのブルペンキャッチャーの旅』(白夜書房)『若者が育つということ 監督と大学野球』(日刊スポーツ出版社)など。

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