検索

【プロ野球】西武・今井達也の脱力フォームに潜む高度な技術 「配球だけでは限界を感じる部分があるので...」 (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

【三振へのこだわり】

「メジャーに行くなら、球数を減らさないといけない」

 昨年、あるMLBスカウトがそう話していた。ストレートの球威とスライダーのキレで勝負する今井は、もともと球数の多い投手だ。

 2024年は25試合に先発し、110球以上投げたのは18試合で、120球以上は7試合。1年間これだけ投げられるのは心身ともにタフな証拠だが、球数管理の厳格なメジャーで先発ローテーションとして回るには、1試合あたりの球数を減らすことが求められる。

 その反面、減らしたのが三振だ。昨季は自身初となる最多奪三振のタイトルを獲得したが、今季開幕戦の三振数は3個にとどまった。本人はどう感じたのか。

「(日本ハム打線は)追い込まれる前に、という感じで浅いカウントからどんどん振ってきていたので、そこは仕方ないかなと思いますね」

 相手との兼ね合いとしながら、若干不満げな表情に見えた。今井は同世代の山本由伸(ドジャース)がオリックス時代に2021年から3年連続で沢村賞&MVPと無双状態だった頃、「何か1つ個人タイトルを獲ろう」と豊田コーチと狙ってきたのが最多奪三振だった。

 山本が海を渡った昨年、今井は初めて同タイトルを獲得。今季もこだわりを表わしてきただけに、もっと奪いたかったのが本音だろう。だが、キャチャーの古賀に聞くと、口にしたのはポジティブな面だった。

「球数を少なくいけたところはいけました。試合運びとしてはよかったのかなと思います。三振ではなくても打ち取ってしまえば......というところはあるので」

 古賀の見解は紛れもない事実である一方、今井が三振にこだわるのは、その先にアウトや勝利の確率を上げられるという投手の心理があるからだ。

 今季は脱力した投球フォームでも注目されているが、試合の要所では力を入れて投げて、打ち取る確率を高めようともしている。その裏にはこんな狙いもある。

「空振りを取るのはなかなか難しく、スピードだけだと取れない。どうバッターを騙していくかが、ピッチャーとキャッチャーのやりとりだと思います。配球だけでは限界を感じる部分があるので、フォームのなかで変化球がくるのかなと思わせたり、真っすぐがくるのかなと思わせたりすることが大事になってくる」

3 / 4

キーワード

このページのトップに戻る