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サッカー日本代表とワールドカップ優勝候補に挙がる欧州列強を比較 ポルトガルと渡り合うことは可能か

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

いま日本が欧州最強国と戦えば(1)~ポルトガル

「ワールドカップ優勝」

 サッカー日本代表を率いる森保一監督は、高らかに目標を設定した。負けるために、大会に挑むチームはない。日本サッカーが確実に進化を遂げてきたのも事実だ。

 しかし日本の最高位はベスト16で、本気で言っているのか? そこで、世界の「W杯優勝候補」の現在地を比較検証しながら、森保ジャパンの"現在"を探った。

 第1回は、直近の欧州ネーションズリーグでドイツを撃破し、決勝に進出したポルトガル代表だ。

 ポルトガル代表は今もクリスティアーノ・ロナウド(アル・ナスル)を中心としたチームと言えるだろう。

 すでに40歳になるロナウドは衰えも指摘される。確かに昔のように左サイドからシザースでカットインし、相手を振りきって豪快にシュートする俊敏性やパワーは失われている。シュートシーンで腰が入っていない姿も見かけるようになった。とはいえ、前線での迫力、そして勝負どころの強さは捨てがたい。

 6月4日に行なわれたネーションズリーグ準決勝では、誰よりもシュートまで持ち込んでいた。とにかく足を振れる。それは簡単なことではなく、意志の強さも技術の高さも群を抜いていた。

ネーションズリーグ準決勝ドイツ戦で決勝点を決めたクリスティア―ノ・ロナウド photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIAネーションズリーグ準決勝ドイツ戦で決勝点を決めたクリスティア―ノ・ロナウド photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIAこの記事に関連する写真を見る たとえば、左サイドを駆け上がったペドロ・ネト(チェルシー)からのクロスに、一瞬止まってボールを受け、左足シュートした場面は象徴的だろう。どうすればマーカーを外せるのか。その練度は尋常ではない。また、ヌーノ・メンデス(パリ・サンジェルマン)のクロスをファーで走り込んでスライディングシュートしたシーンも、スポットによく突っ込んでいた。わずかに足のヒットが足りなかったが、ボールが入るポイントを予測しているのだろう。圧巻はCKで放ったヘディング。40歳とは思えない高い跳躍で、同じ高さを出せるストライカーがどれだけいるか。

 そして同点で迎えた後半途中、ロナウドは存在を証明した。自らのパスミスでボールを失ったあと、猛然とGKまでプレス。そのパスを味方が回収すると、ヌーノ・メンデスからのクロスに走り込んで自ら合わせ、ゴールネットを揺らした。人間業ではない集中力や自信を90分間持ち続けられることで、身体的な衰えをカバーして余りあるのだ。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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