サッカー日本代表と比較検証 現実のワールドカップ優勝候補筆頭、スペインの強さとは?
いま日本が欧州最強国と戦えば(2)~スペイン
ワールドカップでの最高位はベスト16の日本が目標を「優勝」に設定した。そこで世界の「ワールドカップ優勝候補」の現在地を比較検証しながら、森保ジャパンの"今"を探った。
第2回は、2023年欧州ネーションズリーグ優勝、EURO2024王者、パリ五輪金メダル、そしてネーションズリーグでも決勝に進出(結果はポルトガルに2-2の末、PK戦で敗れる)した"無敵艦隊"スペインだ。
スペインの強さは群を抜いている。直近のネーションズリーグ準決勝では、欧州王者パリ・サンジェルマンの選手を中心に構成されたフランスを打ち砕いた。最終スコアは5-4だったが、4-0とリードしてからややペースダウンして追いすがられただけで、強さを誇示していた。
ペドリ、ラミン・ヤマル(ともにバルセロナ)のふたりは最強ぶりを象徴し、どちらもバロンドール候補にふさわしいプレーだった。
ペドリは"サッカーそのもの"に等しい選手と言える。ボールを受け、託すだけで流れるようにプレーが生まれる。タイミングや空間の使い方が絶妙、味方に余裕を与えられることで、アドバンテージを取れる。アンドレス・イニエスタに近いか。単に「ドリブルやターンがうまい」では収まらない。
ヤマルにはボールを受けたら無敵感がある。手練れのディフェンスでも、容易に飛び込めない。常に主導権を握り、相手の裏を取り、ギアの入れ替えは破格。止まったように映ったところから一気にボールを動かし、急角度で方向を変え、とんでもないスピード感がある。フランス戦の自身のこの試合2点目は、コントロールからシュートまで神業的だった。
もはやスペイン代表でもエースの風格を漂わせるラミン・ヤマル photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIAこの記事に関連する写真を見る 一方、"彼らだけではない"のがスペインの強さだ。
2024年にバロンドールを受賞したMFロドリ(マンチェスター・シティ)は、プレーメイクにおいて世界最高の選手である。彼を中心に放射線状にボールが動くと、相手を搦め取るように、怒涛の攻撃を生み出す。視野の広さだけでなく、長短で自在にパスを操る。優雅なゲームメイクは、このポジションの王として君臨していたセルヒオ・ブスケツ(インテル・マイアミ)を懐かしむ声がなくなったほどだ。
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著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。