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サッカー日本代表と比較検証 現実のワールドカップ優勝候補筆頭、スペインの強さとは? (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【指揮官のおかげでストレスなく実力を発揮】

 そして瞠目すべきは、ロドリがケガで離脱している間、ネーションズリーグではレアル・ソシエダのマルティン・スビメンディが同等のプレーメイクを見せた点だろう。準決勝フランス戦も巧みにボールを配給。足の速いボールを縦に差し込み、ミケル・メリーノ(アーセナル)、ミケル・オヤルサバル(レアル・ソシエダ)、さらにメリーノのワンツーと、元レアル・ソシエダトリオの連係で得点を奪うシーンもあった。

 逆説すれば、「レアル・ソシエダでエースの久保建英も彼らに相当する活躍ができるはず」と言うことか。ただ、森保ジャパンの久保は力を引き出されているとは言えない。3-4-2-1に固執する指揮官にはシャドーで起用されているが、単純にサイドに開いてプレーしたほうが効果的な状況だ。

 いまのスペイン代表は選手たちがストレスなく力を出せている。

 中盤はロドリ、ペドリ、ファビアン・ルイス(パリ・サンジェルマン)がつくる。ヤマルが右から中へ、左からはニコ・ウィリアムス(アスレティック・ビルバオ)が中へ、万力で挟み込むように外殻を壊す。綻びが出たところで、ダニ・オルモ(バルセロナ)、メリーノのような得点力のあるMFがゴール前に入る。中央ではオヤルサバルが0トップで駆け引きし、フランス戦もヤマルのクロスを落とし、ニコの得点をアシストしていた。

 圧倒的なチーム力だ。

 スペイン代表監督ルイス・デ・ラ・フエンテが、選手の能力や適性を"公平"に扱えるのも大きい。EURO2024では38歳のヘスス・ナバス(セビージャ)を用いて、ダニ・カルバハル(レアル・マドリード)のケガ離脱をカバーしていた。また、大会開幕当初は控えだったオルモ、オヤルサバルのふたりを切り札として起用。大会を勝ち進むなかでラッキーボーイに仕立て上げた。

 デ・ラ・フエンテ監督は年齢に関わらずプレー自体を評価している。とにかく偏見がない。たとえば33歳のファンタジスタ、イスコが復活を遂げたら、すかさず選出した。レアル・マドリードで不遇をかこったのは「彼中心の戦い」ができなかったからだが、使い方はあるはず――。料理に合う素材、合わない素材の違いはあるが、最初から否定せず、そこで知恵を絞り、腕を振るうのが"究極の料理人"である。

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