【プロ野球】西武・今井達也の脱力フォームに潜む高度な技術 「配球だけでは限界を感じる部分があるので...」
46年ぶりの開幕4連敗。昨季、勝率.350で歴史的最下位に沈んだ西武が、最悪のスタートを切った。本拠地3連戦で日本ハムに0対2、2対3、5対7でいずれも接戦を落としたあと、西口文也監督は敗因をこう語っている。
「1戦目、2戦目は、ここ1本っていうところで打てなかったじゃないですか。投げる方はしっかり投げてくれていたと思います」
昨年、リーグ最低の350得点(=1試合平均2.45点)に終わった打線をどう再建していくのか。それが今季最大のテーマになるが、打線の顔ぶれが大きく変わったわけではなく、急激な改善は期待しにくい。チームの勝利に不可欠なのは、投手陣が踏ん張り続けられるかだ。
「『打てないから......』と言ったところでオレたちには操作できないことだから、オレたちはオレたちの仕事をしよう」
豊田清投手チーフコーチは数年前から投手陣をそう激励してきた。投手が打たれなければ、負けることはない。プレッシャーはかかるが、投手力でチームに勝利をもたらそうとしている。
なかでも大きな期待を背負うのが、2年連続開幕投手を務めた今井達也だ。
昨年、最多奪三振のタイトルを獲得した西武・今井達也 photo by Koike Yoshihiroこの記事に関連する写真を見る
【配球の変化が生んだ省エネ投球】
3月28日の日本ハム戦では、8回まで92球を投げて0対1。日中の最高気温28度から夜になって16度まで下がったなか、豊田コーチは当たり前のように最終回のマウンドに送り出した。
「アイツなら全然いけるだろうし、もともとオレの頭のなかでは100球以上、数はここでは言えないけど、自分のなかにはあって。開幕戦だからといって、彼の球数を減らすつもりはさらさらなかった。去年も一昨年もそう思ってきたから」
今井は9回にフランミル・レイエスに左中間スタンドに運ばれ、7回の清宮幸太郎に続くソロ本塁打で追加点を献上した。105球を投げきり完投したが、打線の援護がなく、チームを勝利に導くことはできなかった。
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著者プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。