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サッカー日本代表の「化けの皮がはがれた」オーストラリア戦 適性を無視したシステムが描く深刻な未来図

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 2026年W杯アジア最終予選、サッカー日本代表は敵地でオーストラリアと対戦し、0-1で敗れた。

 日本はすでに本大会出場を決め、1軍半にも満たないメンバーで、モチベーションも戦力も(通常より)劣っていた。一方のオーストラリアは本大会出場を懸けた戦いの真っ只中で、ホームで「絶対に勝ち点を取る」と意気盛んだった。その差は大きく、終盤の失点はショッキングでも、結果そのものは問題ではない。

 深刻なのは、森保ジャパンの「化けの皮がはがれた」という事実で、このまま本大会に突入していく未来だ。

後半45分、日本はオーストラリアにこの日唯一と言ってもいいチャンスを決められた photo by Kazuhito Yamada/Kaz Photography後半45分、日本はオーストラリアにこの日唯一と言ってもいいチャンスを決められた photo by Kazuhito Yamada/Kaz Photographyこの記事に関連する写真を見る 先発した鎌田大地は、苦しんだシーズンも最後はFAカップ優勝の殊勲者になったように、この日も実力を見せつけた。

 ボールキープ力は絶大。戦術的センスにも優れ、相手との間合いを感じ取って、シャドーから3列目の左に落ち、ボールを受けると巧みに前へ運んでいった。相手がそのルートを消しにきてボールを失う場面もあったが、それを奪い返せる切り替えの強度は、トップレベルの舞台でプレーを重ねている選手の証だった。

 交代で出場した久保建英も、ラ・リーガのレアル・ソシエダでエースの称号を得た実力を示していた。

 1対1で相手に飛び込ませない。それ以上にコンビネーション力は世界屈指で、ライン間に入った鈴木唯人にすかさずパスを入れ、ワンツーで抜け出し、決定的なクロスを折り返したシーンは"静かな怖さ"があった。一瞬で勝負を決められるというのか。その後、セカンドボールを拾って完全に相手を外し、右足で打ったシュートが外れた場面は、むしろ本人が「決めて当然」と悔しがるレベルだろう。

 ふたりとも高みに到達した選手であり、ピッチで不完全なシステムを運用していた。

 しかし、森保ジャパンの限界はここにある。

 欧州の最前線にいる選手たちは森保ジャパンの根幹と言える。そのため、有力選手が抜けると、途端に戦術システムの不具合が露になる。「システムありき」で中身は乏しい。選手が本来の力を出しきれないのだ。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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