サッカー日本代表の「化けの皮がはがれた」オーストラリア戦 適性を無視したシステムが描く深刻な未来図 (3ページ目)
そしてその平河も、不具合を解決できなかった。
失点シーンでは、鎌田が鈴木との呼吸が合わずにパスミス、一度は攻撃を封じてスローインにした。ここで戻したボールに対し、亀裂が生まれる。前は寄せたが、最終ラインは押し上げが緩慢で、ライン間の相手選手にボールが入る。慌てた藤田譲瑠チマが食いつき、背後にスペースが生まれる。再びパスを差し込まれた際、瀬古歩夢が内側に入られる失態を犯し折り返される。広大な空間からアジズ・ベヒッチにシュートを打ちこまれた。
この時、平河は献身的に最終ラインまで戻っていたが、"頑張りすぎ"だった。数的同数のなかで、エリア内に入ってきた敵に対しては、自分と対峙していたシューター(左ウイングバックのベヒッチ)を逃してはならなかった。言うならば、アリバイ的に下がりすぎていた。ディフェンダーではない彼の本質が出てしまったのだ。
森保ジャパンは「史上最強」の戦力を手にしている。しかし、実状は有力な個人が、どうにか戦術運用していたにすぎない。適性を無視したシステムでは、本大会では強豪を前にノッキングし、「必死に守り、一発にかける!」という玉砕戦に転じるしかないだろう。それはヘビーな未来図だ。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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