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サッカー日本代表の「化けの皮がはがれた」オーストラリア戦 適性を無視したシステムが描く深刻な未来図 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【3-4-2-1完成のイメージができない】

 たとえば、代表デビューになった俵積田晃太は左ウイングバックで先発したが、空回りしていた。所属するFC東京ではシャドーを担当しており、無理もない(彼は本来、シャドーにも適性はなく、生粋のサイドアタッカーなのだが)。左足クロスは惨憺たるものだった。弱く不正確。ユースレベルで、インサイドを切られたら何もできなかったのである。

 なぜ、森保一監督は3-4-2-1というフォーメーションにこだわるのか。三笘薫や中村敬斗のようなヨーロッパのトップリーグで二桁得点するアタッカーを左ウイングバックで起用するのは宝の持ち腐れである。そもそも、左ウイングバックは本来、左利きが基本(レバークーゼンのアレハンドロ・グリマルドやインテルのフェデリコ・ディマルコなど)。しかも大外からクロスを入れるので、セットとして高さのあるセンターフォワードがいるのも条件だ。

 オーストラリア戦は、たとえクロスを入れても、先発メンバーに高さで勝てる選手はいなかった。これでは、どこまでいってもシステム完成のイメージができない。永遠の迷路のようだ。

 指揮官は3-4-2-1というシステムのなかに選手を当てはめているが、そこら中で不具合が起きている。ボール支配率は高く、「決めきっていれば」という意見もあるが、決定機は多くなかった。歪みのせいで、オーストラリアの人海戦術も崩しきれなかったのである。また、GKの谷晃生が相手に流れを与えるようなパスミスを連続する破綻も生じていた。

 オーストラリア戦の唯一の収穫は右ウイングバックを務めた平河悠だろう。代表デビューらしくエネルギッシュなプレーで、左右両足のミドルなど可能性を感じさせた。また、右利きで右ウイングバックに入ったことで、シンプルに右足でクロスを狙えた。適性を証明したが、不思議ではない。彼は所属するブリストル・シティでも右ウイングバックを経験しているからだ(クロスの精度にやや難はあったし、中とのコミュニケーションもないに等しかったが)。

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