【ワールドカップ2026】挑戦を止めないモドリッチ マエストロのラストダンスを見逃すな
【ワールドカップ2026 注目選手】
(8)ルカ・モドリッチ(クロアチア)
2026年ワールドカップで世界中のファンが注目する「マエストロ」、それがルカ・モドリッチだ。40歳となった今もなお輝きを放つ理由は、その不屈の精神と卓越した技術にある。
photo by Aflo
小柄な体を補って余りある技術と戦術眼
ルカ・モドリッチは、1985年に当時のユーゴスラビア(現クロアチア)で生まれた。幼少期にクロアチア独立戦争を経験し、難民キャンプでの生活を余儀なくされるという過酷な環境で育ったことが、その強靭なメンタリティに影響を与えてもいるだろう。
ディナモ・ザグレブで頭角を現すと、2008年にイングランドのトッテナム・ホットスパーへ移籍。プレミアリーグの激しい肉弾戦に晒されながらも、技術と判断力で中盤を支配した。
2012年からは名門レアル・マドリードへ加入。当初は「最悪の補強」と揶揄される時期もあったが、その評価を覆して不動の司令塔となり、前人未到のチャンピオンズリーグ3連覇を含む多くのタイトル獲得に貢献した。2025年からは活躍の場をミランに移している。
最大の武器は、アウトサイドキックを駆使したパス精度と、ピッチ全体を俯瞰しているかのような戦術眼である。さらに中盤の底から前線までを縦横無尽に駆け回るスタミナを持ち、守備では鋭い読みでボールを奪う。
加えて、相手のプレスを無力化するターン技術や、決定的な場面で見せるミドルシュートも一級品である。30代後半を迎えてからもなお、トップレベルを維持するための徹底した自己管理を続けていることでも知られる。
小国を輝かしい戦績に導いた立役者
モドリッチとクロアチア代表の歩みは、ワールドカップの歴史における「ジャイアントキリング」と「小国の奇跡」といえる。
モドリッチが最初に出場した2006年ドイツ大会と2014年ブラジル大会はグループリーグで敗退したが、2018年ロシア大会ではその名を歴史に刻んだ。キャプテンとしてチームを牽引し、デンマーク、ロシア、イングランドを撃破して決勝へ進出。フランスに敗れ準優勝となったが、大会最優秀選手を受賞した。ちなみにその同年にはバロンドールも獲得し、メッシ・ロナウドの2強時代に終止符を打った。
直近の2022年のカタール大会は37歳で出場、準々決勝で優勝候補筆頭のブラジルを破るなど再び快進撃を見せ、3位入賞を果たした。
若手を生かし、予選を首位突破
2022年大会終了後、多くのファンがモドリッチの代表引退を予想した。しかし、彼は「情熱が続く限りプレーする」と宣言し、欧州予選の舞台に立ち続けた。
欧州予選では、クロアチアはモドリッチを中心に堅実な戦いを見せた。大ベテランは予選の重要な局面でピッチに立ち、若手ミッドフィルダーとの連携において献身的に動き続けた。ここ一番でのパス一本、あるいはプレスを回避する身のこなしは、今なお世界最高峰といえるものだった。
その結果、予選を通じてアンドレイ・クラマリッチが6ゴール、イヴァン・ペリシッチが4ゴールを挙げるなど、計26得点という強力な攻撃力を発揮した。
最後のワールドカップにかかる期待
クロアチア代表は今、転換期にある。往年の主力選手が去り、身体能力に長けた若手が台頭するなかで、モドリッチはチームをひとつにまとめあげる存在だ。戦術的に試合展開に応じた交代枠の活用が予想されるが、いかなる場面でも動じない彼の背中はチームに落ち着きを与える。
戦火を経てサッカーボールで世界を制した男が、最後に世界の舞台でどのような軌跡を描くのか。そのプレーは、記録以上に記憶に残るだろう。

