藤浪晋太郎は中継ぎ転向で覚醒したと言えるのか 山本昌が指摘した悪いクセとスプリットの比率
今季からメジャーリーグのアスレチックスでプレーしていた藤浪晋太郎が、シーズン途中にオリオールズに移籍し、力強いピッチングを見せている。現地時間8月6日のメッツ戦では自己最速となる165キロをマークし、2者連続3球三振。メジャー移籍当初は先発として思うようにいかなかったものの、中継ぎに転向してから別人のような投球を見せるようになり、今ではリリーフに不可欠な存在となっている。いったい藤浪にどんな変化があったのか。阪神時代の2019、20年に臨時コーチとして指導した山本昌氏に聞いた。
現地時間8月6日のメッツ戦で自己最速の165キロをマークした藤浪晋太郎この記事に関連する写真を見る
【スライダーは危険なボール】
メジャー移籍当初はストライクをとるのに苦労している印象を受けましたが、4月後半にリリーフへ配置転向されて以降、藤浪投手のよさが出ているように感じます。ストレートとスプリットが中心のピッチングになってから、投球フォームのブレが少なくなりました。
藤浪投手はもともと大阪桐蔭高から2012年ドラフト1位で阪神に入団し、3年連続で2ケタ勝利を挙げた投手です。トータルとして、いいものを持っていることは間違いありません。もしそうでなければ、高卒の投手がいきなりそれだけたくさん勝つことはできませんから。
しかし、以降は投球フォームのバランスを崩し、思うように勝てなくなりました。その大きな原因は、持ち球のひとつであるスライダーにあったと僕は考えています。
先発投手は長いイニングを投げる必要があり、変化球も一定以上の割合で織り交ぜていくのが一般的です。投球にバリエーションを持たせないと、バッターは試合のなかで慣れてきて、どんなに速いボールでも対応されてしまうからです。
藤浪投手の場合、変化球でとくに多く投げていたのがスライダーでした。このスライダーという球種は、ピッチャーにとってストライクをとりやすいという意味で"ラク"なボールです。
でも、藤浪投手はスライダーを多く投げることにより、投球フォームを崩すクセを持っていました。ヒジを少し下げたり、手首を寝かすとスライダーの曲がり幅は大きくなるのですが、それがストレートやスプリットなどほかの球種に悪影響を与えていたのです。
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プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。