藤浪晋太郎は中継ぎ転向で覚醒したと言えるのか 山本昌が指摘した悪いクセとスプリットの比率 (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Getty Images

 だから僕は阪神で臨時コーチを務めた時、「手首を立てていこう」という話を藤浪投手にしました。スライダーを多く投げることにより、手首が少し遠回りするクセがついていたからです。そこを直せば、以前のような能力を発揮して勝ち星を重ねていけるはずだと考えました。

【リリーフ転向後に好調なワケ】

 今季、アスレチックスでリリーフに回って以降、藤浪投手のよさが発揮されている理由もそこにあると思います。代理人のスコット・ボラスさんが「スプリットを通じてリリースポイントを習得したことが大きい」と話したと報道されましたが、僕も同様の見立てです。

 先発ではスライダーも含めて多くの球種を投げていましたが、リリーフに回り、ストレートとスプリットの比率を高めました。それにより、手首が立つようになってきた。ストレート、スプリットは手首を縦に使うボールだからです。そうして力が伝わり、藤浪投手らしい、強いボールを投げられるようになったと僕は見ています。

 そうした裏には、本人が追い込まれたこともあるかもしれません。メジャーに移籍した当初はそれくらい本調子から遠く、本人も相当の危機感を抱いたはずです。そこから「自分の生きる道はストレートだ」と腹をくくった。そうした部分もプラスに出ているような気がします。

 今の藤浪投手は圧倒的なピッチングを見せることもあれば、思うようにいかない日もあります。現地時間8月2日のブルージェイズ戦では1対1で迎えた6回二死一、二塁で登板し、コントロールが定まらずにピンチを広げ、2者連続の押し出し死球を与えてしまいました。周囲には「制球難がまた顔を出した」と言われるでしょうが、調子が悪い日は誰にでもあります。何らかの原因で以前の悪いクセが顔を出し、押し出し死球という結果になったのでしょう。

 でも、おそらく本人は修正するポイントをつかんでいるはずです。今後もうまくいかない試合もあるかもしれませんが、その都度、修正しながらやっていくと思います。

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