高橋大輔の生きざまを『氷艶』に見た 月のように未踏の道を照らしつづける先駆者
高橋大輔×増田貴久『氷艶』レポート 後編(全3回)
7月5日、横浜。高橋大輔と「NEWS」増田貴久のダブル主演のアイスショー『氷艶 hyoen 2025-鏡紋の夜叉-』の公演は、大きなインパクトを与えている。
堤幸彦監督の多彩な世界観、SUGIZO(LUNA SEA/X JAPAN)の壮大でアバンギャルドな音楽、そして脚本、振り付け、豪華絢爛な衣装など、各分野のトップで彩った作品と言える。
俳優もスケーターも境界線なく躍動。増田のスケーティングは「あれだけ自然に滑れるのは才能と努力」とスケート関係者が太鼓判を押すほどだし、村元哉中のスケーティングだけで表現する神秘性は"演じる"を超えていた。
もっとも、やはり『氷艶』シリーズで主役を務め続ける高橋大輔の存在は格別だったーー。
『氷艶』で桃太郎・温羅伝説の温羅を演じた高橋大輔 ©氷艶hyoen2025この記事に関連する写真を見る
【先駆者・高橋大輔の放つ光】
2018年に4年ぶりに現役復帰し、全日本選手権で2位に輝いた高橋の姿を、筆者は克明に描いている。
「先駆者の放つ光」。当時のルポには、そうタイトルをつけた。ショートプログラムからフリーにかけ、ちょうど満月だったのもあるか。氷上で舞う姿が、闇夜に浮かぶ月のように淡い光を放ち、道標のように映ったのだ。
高橋は長光歌子コーチとの二人三脚で、未踏の道を切り拓いてきた。4回転ジャンプに挑戦しつづけ、磨き上げたステップは世界一と称賛され、2010年バンクーバー五輪ではメダルを獲り、世界選手権では優勝した。男子のアジア勢として、すべて史上初の偉業だった。国内ではマイナー競技のフィギュアスケート男子を人気スポーツに引き上げ、あとにつづく者たちの道をつくってきた。
先駆者のまぶしさは太陽の強い光も感じたが、太陽の荒々しさは控え目な彼の性格とはずれる。満ち欠けを繰り返し、地球の自転に影響を与えながら、シンクロして回転する月の物語が彼に合っている気がした。
実際、『氷艶 hyoen 2019 -月光かりの如く-』でも、高橋は月の化身のような光源氏を演じていた。一途で不器用なために困難にも遭うが、その真摯な光に人は胸を打たれる。
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著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。


