興南・我喜屋優監督が危惧する高校野球の未来 「地域の人から愛されるという高校野球の姿が崩れつつある」
群雄割拠〜沖縄高校野球の現在地(3)
興南・我喜屋優監督インタビュー(前編)
2024年夏の高校野球沖縄大会でベスト4にエナジックスポーツ、KBC、日本ウェルネス沖縄と新鋭校が躍進するなか、最後の壁として立ちはだかり、県勢最多の14回目の甲子園に出場したのが興南だった。
2010年には甲子園で史上6校目の春夏連覇、沖縄勢では史上初の夏の全国優勝を達成。現在74歳になった我喜屋優監督に、沖縄の高校野球の現在地はどう映っているのだろうか。
2010年に甲子園春夏連覇を達成した興南・我喜屋優監督 photo by Nakajima Daisukeこの記事に関連する写真を見る
【野球部の進路先を公表すればいい】
── 昨夏の甲子園出場時、ある取材での「野球しかしていない高校生の将来は、誰が保証するのでしょうか」という発言が波紋を呼びました。
我喜屋 エナジックさんには、僕の心が100%伝わっていないような話もあるけど......向こうは向こうのやり方があると思うのですが、なんと言っていましたか?
── 受験科目を学ぶだけでなく、工業高校や商業高校ならではの文武両道の形もあり、エナジックスポーツも体育科としてそれを行なっていると神谷嘉宗監督は話していました。「野球バカをつくる気はない」というのは、我喜屋監督の考えと根底は一緒だろうと思います。
我喜屋 高校野球は3年間で終わりだけど、人生は一生続きます。野球を通してその道をつくっているだけの話なわけです。ただ商業高校や工業高校であっても、(県立なら)6時間目まで授業をしているわけですよね。体育科もそう。それは国から「最低でもこれをやりなさいよ」と定められたカリキュラムがあるから。
僕は6時間目まで授業を受けるのが、高校生の基本だと思っている。興南にもスポーツコースがあった時期もあったんですよ。だけど3年生は夏の大会が終わったら、5、6時間目の時に何もすることがない。ゆるゆると遊んでいる姿を見て、(スポーツコースは)取っ払ったんです。
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著者プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。