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興南・我喜屋優監督が危惧する高校野球の未来 「地域の人から愛されるという高校野球の姿が崩れつつある」 (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

── それでは高校生の将来に役立たないと?

我喜屋 そう。高校でスポーツばかりやっても、みんなが将来、スポーツをやるわけじゃない。高校で野球を断念する者もいるし、医者になる者、会計士になる者もいる。そういう準備のための高校3年間。野球は、放課後の午後4時半から。短い時間のなかで、野球と将来の準備をする。あまり偏るとね。

 文武両道という言葉はすばらしいと思う。それを無視すると、高校生活が終わったあとに「あの子はどうしてんのかな?」となる。そうならないためにも、それぞれの学校が野球部員の進路先を公表すれば一番いいんです。そうすることによって、中学生に「野球バカではダメだな。この学校に行こう」って選択肢ができる。

── 「野球バカではダメ」というのは、多くの指導者に共通しているように感じます。

我喜屋 昔は沖縄も知念や那覇、首里、嘉手納とか、公立校がけっこう甲子園に行きました。あるいは興南みたいに私立でも遜色ない戦いが続いた時代があったけど、今は違う。全国を見ても大阪桐蔭さんには地元の子がほとんどいないし、健大高崎、山梨学院、あるいは敦賀気比もそう。テレビ中継の解説で行ってメンバー表を見た時、「なんだこれは」ってね。これでは地元から愛される"おらがチーム"になってないなと。これが高校野球の衰退につながっているのかなと。

【あの特待生問題は何だったの?】

── 昨今は公立の甲子園出場が難しくなり、部員不足に悩むチームも増えています。

我喜屋 沖縄でも今、公立に選手が足りないとか、特定の学校だけが強くなっている。甲子園も公立の出場校が中心で第1回大会が始まったのに、今は逆転している(※第1回大会は出場10校のうち、私立は早稲田実業のみ)。日本高野連に思うのは、野球界全体の問題に発展してきているよ、と。このままでは本当に人気がなくなるよ、スタンドが埋まらなくなるよ、ということです。

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