興南・我喜屋優監督が危惧する高校野球の未来 「地域の人から愛されるという高校野球の姿が崩れつつある」 (3ページ目)
── 2010年代の甲子園大会は80万人台の総観客数をキープしていましたが、昨夏は67万800人でした。
我喜屋 沖縄もそう。高校野球は一般の生徒がたくさん応援に来て、初めて活気あるスタンドの風景になる。それが特別なチームだけ、ましてや生徒数が少なくて野球部ばかりの学校とかスポーツ中心の学校になると、スタンドを見ればわかるんですよ。学校関係者しか来てないな、とか。
── 部員数や観客数の減少、甲子園出場校の固定化など高校野球は課題山積ですが、どうすればいいと思いますか。
我喜屋 昔の佐伯達夫先生(1967年〜80年日本高野連会長)みたいに「学生野球はこうだ」と、野球部は学校の見本にならなきゃダメ。もちろん授業もちゃんと受けて、一般生徒との交流も深めて、地域の人から愛されるという高校野球の姿が崩れつつあるので、(日本高野連は)それを元に戻す努力をしてほしい。
── 日本高野連のあり方に問題があると?
我喜屋 本当の高校野球、学生野球憲章を高野連が見直していかないと、「あの特待生問題は何だったの?」となる(※2007年に授業料免除など、過剰な特典を与えられた特待生が多数いると発覚した問題)。寮費をタダにするのはいいのか? (規定で)いいなら、それでいいんですよ。そうでなければ、守っている学校には不平等じゃないの? あれだけ平等性を求めて、12月から3月まで対外試合禁止とやるけれども、もっと深くちゃんと掘り下げないと、本当に僕は高校野球がダメになると思っています。
── 日本高野連は昨年、学生野球憲章の改正案を策定するとし、意見を公募しました。たとえば、学生の商業利用に関して「考え方が古すぎる」という声もありますが、どう思いますか?
我喜屋 学生野球憲章は、本当は純粋なんですよ。特にお金が動くようなことはいっさいさせない。物品を与えて選手を勧誘したらダメ、とかね。いろんな意味で厳しく、あるいは将来の学生のためにというのが発祥だったはずなのに、オリンピックと一緒で商業ベースになって、全国から選手を集めている。食材で言えば、ウニ、アワビが多くなっちゃって。
著者プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。
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