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辰巳リカは「後輩への嫉妬心」で東京女子プロレス初の三冠を達成「未詩とは魂の闘い。体は限界でも心は折れなかった」 (4ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko
  • photo by 林ユバ

 渡辺はアイドル兼プロレスラーグループ『アップアップガールズ(プロレス)』のメンバーとして、2018年1月にプロレスデビュー。何もできないところからメキメキと成長していった彼女を、辰巳はパートナーとして頼もしく思っていた。しかし東京ドームでの活躍を見て、焦りを覚えた。嫉妬した。「闘ってみたい」と、思ってしまった。

「未詩は、パワーはもちろん、速さとかも、異次元の選手になってきていると思う。私のほうが先輩で、白昼夢を引っ張ろうと思ってやってきたのに、負けてしまう可能性もあるけれど......純粋に闘ってみたいと思っちゃったから、しょうがない。思い切りやり合うしかないかなって」

 3月18日、有明コロシアム大会。渡辺の保持する「インターナショナル・プリンセス王座」に挑戦。辰巳が言うように、渡辺は序盤から異次元の強さを見せつけた。しかし渡辺がジャイアントスイングを仕掛けると、辰巳は渡辺の首を絞めて阻止。「強さvsクレイジー」の名勝負が繰り広げられた。

結果は、辰巳が執念の勝利。辰巳は東京女子プロレスが認定する3王座全獲得の"グランドスラム"を初めて達成した。

「それこそ魂の闘いというか。体はほぼ限界だったんじゃないかと思います。それでもしがみついて離さなかったから勝てた。心が折れちゃったら本当に動けなくもなるけど、そこは折れなかったんだと思いますね」

 3月31日、米ロサンゼルス大会でビリー・スタークスを破り、V1。4月15日、後楽園ホール大会でバークビクセンを破り、V2。5月5日、後楽園ホール大会で鈴芽を破り、V3。着々と防衛を重ねる中、7月8日に大田区総合体育館大会にて、愛野ユキを相手に防衛戦を行なう。

「ユキも気持ちで闘う選手だと思うから、私も負けない気持ちでいきたい。そこから生まれる熱量が面白いものに膨れ上がったらいいなと。"インターナショナル・プリンセス"という名前なので、海外の選手とやる印象が強いかもしれないんですけど、だからこそ東京女子の所属選手同士で海外に名を轟かせるような試合をするのが、私のチャンピオンとしての使命でもあると思う。大事な一戦ですね」

 辰巳のポリシーは、「全身全霊」。

「手は抜きたくないって思います。かっこよく言えないんですけど。そりゃあ、かっこよく言いたいとかはあるんですけど、むしろかっこ悪いところもさらけ出す。全部さらけ出す。自分を作らずに」

 何度もタイトルに挑戦し、負け続けた。毎回、絶望を味わった。それでも自分を奮い立たせ、諦めずにやってきた。「ファンの人の応援があるから、折れずにやってこれた」と話す。

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