辰巳リカは「後輩への嫉妬心」で東京女子プロレス初の三冠を達成「未詩とは魂の闘い。体は限界でも心は折れなかった」

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko
  • photo by 林ユバ

■『今こそ女子プロレス!』vol.12

辰巳リカ 後編

(前編:プロレス衣装と覆面でアイドル活動→「プロレスをやらせてください」と高木三四郎に直談判した>>)

【藤波辰爾を彷彿とさせる「髪切り」】

 2016年1月4日、東京女子プロレスに初めてベルトが創設された。「TOKYOプリンセス・オブ・プリンセス王座」だ。辰巳は当初、自分はベルトとは無縁だと感じていたという。

「当時は、めちゃくちゃ強い選手ではなかったし、自分には目指せないものなんだろうなと。まずは目の前の相手を倒すことが先決だと思っていたので、ベルトはまったく意識していなかったですね」

リング上でのクレイジーファイトも人気の辰巳リカリング上でのクレイジーファイトも人気の辰巳リカこの記事に関連する写真を見る しかし、坂崎ユカとのシングルマッチに勝利したことで、「イケるんじゃないか」という気持ちが芽生えた。10月29日、横浜ラジアントホール大会にて、優宇の保持するTOKYOプリンセス・オブ・プリンセス王座に挑戦する。

「惨敗だった。歯が立たなかった」と辰巳は振り返るが、この頃から彼女の試合は目に見えてよくなっていった。2017年、SIN美威獅鬼軍と抗争を繰り広げたのも大きかった。"外敵"である沙希様に何度も挑んでは敗れ、挑んでは敗れる中、一試合一試合、動きがよくなっていった。

 辰巳はこの頃から、「もっと強くなりたいと思うようになった」と話す。プロレスにおいて、意識や気持ちがいかに重要か、彼女の試合は物語っていた。

 2017年11月3日、新木場大会にて、再度、TOKYOプリンセス・オブ・プリンセス王座に挑戦。チャンピオンは才木玲佳。敗れたものの、体格差のある才木に対して、真っ向からパワーでぶつかっていった。辰巳の気持ちの強さが見えた試合だった。

 その半年後の2018年5月3日、後楽園ホール大会にて、山下実優の保持するTOKYOプリンセス・オブ・プリンセス王座に挑戦することになった。直前の大会で、辰巳はハサミで自慢のロングヘアーを断髪。1988年4月22日、藤波辰爾(当時、辰巳)がアントニオ猪木の前で自身の前髪を切り落とした"髪切り事件"を彷彿とさせた。

「それまで自分の中で、ロングヘアーがアイデンティティだと思ってたし、『変えちゃいけないもの』と縛りつけて考えていたんです。でも、藤波さんへのリスペクトから髪切りには憧れもあり、気合を示したくて『今だ!』と。後先考えず、勢いのまま切りました」

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