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辰巳リカは「後輩への嫉妬心」で東京女子プロレス初の三冠を達成「未詩とは魂の闘い。体は限界でも心は折れなかった」 (2ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko
  • photo by 林ユバ

 迎えたタイトル戦。2年前の初挑戦(対優宇)とは別人のようだった。打撃が得意な山下の足を徹底的に攻撃し、現在のクレイジーファイトの片鱗も見せた。三度目の挑戦も叶わず、またしてもベルト獲得はならなかったが、辰巳の成長は誰の目にも明らかだった。今年3月に上梓された『まるっとTJPW!! 東京女子プロレスOFFICIAL "FUN" BOOK 2023』(玄光社)の中で、山下はこの試合を自身のベストバウトに挙げ、「辰巳リカという選手は、気持ちでスタイルを構築していく選手。その世界観がすごく楽しい」と綴っている。

 辰巳が試合で見せる感情の部分を、最初に「情念」と表現したのはアジャコングだったという。辰巳は自身を「プロレスで日常生活のモヤモヤとか、いろんなものを昇華するタイプ」と評する。内に情念を秘め、彼女は少しずつ、少しずつ、ベルトとは無縁のアイドルレスラーではなくなっていった。

 2019年11月3日、DDT両国国技館大会において、渡辺未詩とのタッグ「白昼夢」として、沙希様&操のNEO美威獅鬼軍から勝利。自身初となるベルト「TOKYOプリンセスタッグ王座」を戴冠。そして2021年1月4日、後楽園ホール大会で坂崎ユカを下し、プリンセス・オブ・プリンセス王座を初戴冠した。

【極限状態の試合でゾーンに入った】

 同年2月、渡辺未詩を破ってV1。4月に伊藤麻希を破ってV2。しかし5月、山下実優に敗れてベルトを落とした。辰巳は「チャンピオンだからと背負いすぎていた」と当時を振り返る。

「団体の"顔"なので(東京女子プロレスに)恥はかかせられないし、興行の締めを任されることもあるので、とにかくしっかりしなきゃと。山下に負けて、気が抜けたじゃないですけど、気を張り過ぎていたんだと気づきました。そこで吹っ切れて、より自由に闘えるようになったかな、とも思います」

 ベルトを手にしたことで、大きく変わったこともある。"言葉"だ。チャンピオンとして、自分の発言でみんなを奮い立たせたいと思うようになった。

「なるべく他の選手と同じことは言いたくない。毎回『頑張るぞ!』じゃなくて、1試合1試合の意味を考えて発言するようになりました。あと、なるべくいろんな言葉を使いたいとずっと思ってます。難しいですけど」

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