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錦織圭も「あのテニスがどこまで通用するのか?」と注目する20歳 伊藤あおいはトリッキーなスタイルで我が道を行く

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

 ここ最近、テニスファンや関係者の間で、何かと話題にのぼる選手がいる。

 彼女の名は、伊藤あおい──。2004年5月21日生まれの20歳で、5月4日現在のシングルス世界ランキングは101位。この1年ほどでランキングを急上昇させ、グランドスラム本戦デビューも目前だ。

 この20歳の新鋭がファンの耳目を集めているのは、戦績もさることながら、ユニークなプレースタイルにある。

テニス界注目の20歳・伊藤あおい photo by AFLOテニス界注目の20歳・伊藤あおい photo by AFLOこの記事に関連する写真を見る 伊藤は身長167cmと、日本人選手としては上背に恵まれているほう。ただ彼女に、パワーで相手をねじ伏せようという考えは、毛頭ない。

 棒立ちに近い姿勢でラケットを上から下へと振り下ろし、文字どおりボールを薄切りするように放つ「スライス」は、今や彼女のトレードマークだ。

 バウンド後に角度を変えて低く滑るこのショットで、相手のパワーを時に利用し、時にいなして、撹乱しつつミスを誘うのが伊藤流。かと思えば、予期せぬタイミングでスパーンと鋭く、強打を叩き込む。展開はトリッキー。

 ところが当の本人は、表情を変えず、ポイント間の間も取らず、淡々と時を進めていく。その独特のリズムに足を取られたら、もうそこは伊藤の領域だ。

 この、特異ながら確固たるプレースタイルには、日本男子の「トップ2」も熱視線を注ぐ。

 昨年10月、伊藤がジャパンオープンで上位勢を次々に破った際、西岡良仁は「ひっそりと応援していた」とXで公表。「このプレースタイルのままやり抜いてほしい」と、願いをこめたエールを送った。

 さらには錦織圭も、最近スライスに取り組んでいるという話の流れから、「あおいちゃんを目指しながら」と言及する。伊藤の存在を「気になっているといえば、気になっていますね」と認めたうえで、次のように続けた。

「コーチ目線じゃないですけど、これからどうしていくんだろうなと見ています。たぶん、今のままではトップ20や30の選手には勝てないと思うんですが、早いプレーも意外とできるようなので、可能性は全然あるなと。

 あのテニスがどこまで通用するのか、見てみたいですね。パワーのある選手に対し、これからどうしていくんだろうなっていうのを、楽しみにしています」

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著者プロフィール

  • 内田 暁

    内田 暁 (うちだ・あかつき)

    編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。

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