錦織圭も「あのテニスがどこまで通用するのか?」と注目する20歳 伊藤あおいはトリッキーなスタイルで我が道を行く (5ページ目)
【全仏とウインブルドンに注目】
── 帰国後、ビリー・ジーン・キング・カップ(国別対抗戦)で日本代表に初選出されましたが、そこでも少し体調が悪かったそうですね。
「帰国したあと、1週間くらいで体調もよくなって、代表の皆さんとたくさん練習もできたんです。ただ、大会2日目に熱を測ったら38.5度くらいありまして。もし風邪でほかの方にうつしたら土下座じゃ済まないので、ホテルに戻っていました。初めての経験や慣れない団体行動などもあり、知恵熱が出たんだと思います」
── 次は全仏オープンとウインブルドンが控えています。ヨーロッパ遠征はいつからですか?
「全仏オープン予選の直前に、ひとつ大会に出ます。全仏本戦は今4番アウト(補欠)。賞金が高いから皆さん、多少のケガでもやめないと思うので、予選からになると思います」
── ウインブルドンはもうひと息で本戦から入れそうですね。芝は得意そうですか?
「いやー、(ウインブルドンの芝は)一回もやったことがないのでわからないですが、たぶんボールに追いつけないです。転びそうなので」
※ ※ ※ ※ ※
このインタビューの途中、近くを通りかかった関係者に「ウインブルドンは本戦から行ってみたいので、ちょっとがんばります」と宣言した伊藤。そこで最後に「この取材用にも同じことを言ってもらえます?」と聞くと、「ダメです」といたずらっぽい笑みを残して去っていった。
あえてハードルを低めに設定し、プレッシャーをかけないのも伊藤流。
クレー(土)や芝のコートは「イレギュラーが多いので苦手」と本人は明言するが、未知なる化学反応への期待も高まる。
外的要因やイレギュラーに満ちた路(みち)を、独自のライン取りで進んでいく----。そんな新たな旅が、伊藤あおいを待っている。
著者プロフィール
内田 暁 (うちだ・あかつき)
編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。
【写真】コートの女神!日本女子テニス「6人のティーンエイジャー」フォトギャラリー
5 / 5