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バスケ男子日本代表 ホーバスHCが磨きをかける「速い展開」と若手中心の招集の意図

  • 永塚和志●取材・文・写真 text & photo by Kaz Nagatsuka

今年の代表合宿では若手の発掘も目的としているホーバスHC photo by Kaz Nagatsuka今年の代表合宿では若手の発掘も目的としているホーバスHC photo by Kaz Nagatsuka

前編:バスケ男子日本代表、2028年ロス五輪への船出

トム・ホーバスヘッドコーチ(HC)の下、再び動き始めたバスケットボール男子日本代表。今年はパリ五輪以来の国際大会となる8月のアジアカップがひとつの目標となるが、2028年ロサンゼルス五輪に向かう過程においての重要な一歩となる。

代表合宿ではこれまでの常連選手の多くが不参加だったこともあり、アメリカの大学に在学中の選手も含め、高さを備えた能力のある若手が多く顔をそろえた。

果たして新生ホーバスジャパンはどんなケミストリーを醸成していくのか。

7月5、6日、有明アリーナで行なわれるオランダ戦に注目だ。

【代表合宿リスト18名中11名が若手主体の合宿からの招集】

 男子日本代表チームの将来への期待感を風船にたとえるならば、それはどんどんと大きさを増していきそうな予感がある。

 期待感とは、新たに入ってくる才能あふれる若い選手たちの数に比例すると言っていいかもしれない。

 同代表は8月、昨夏のパリ五輪以来の国際大会となるアジアカップ(サウジアラビア・ジッダ開催)を迎える。2027年のワールドカップ(カタール開催)、その翌年のロサンゼルス五輪での躍進を目指して始動をしているチームにとって、土台をつくっていく大会になると言ってもいいだろう。

 パリ五輪での日本は全敗を喫し、まだ世界との差が確実にあることを感じさせられた一方で、強豪・フランスを倒しかけるなど希望も示した。今後はこの差を縮めながら、差し込む希望の光をより強くしていく作業となっていく。

 強化においてもっとも肝要なことのひとつが、選手層を拡充させることだ。パリでは善戦もあったとはいえ八村塁(ロサンゼルス・レイカーズ)、渡邊雄太(千葉ジェッツ)、河村勇輝(昨シーズンはメンフィス・グリズリーズ2ウェイ契約)、ジョシュ・ホーキンソン(サンロッカーズ渋谷)といった主力に出場時間が偏った。このままでは試合感覚も短い世界大会で勝ち抜いていくことは難しくなる。

 アジアカップのあるこの夏は、「新顔」を求めていくことになる模様だ。6月下旬にはアジアカップへ向けての強化試合となる東京・有明アリーナでの対オランダ戦(7月5、6日)へ臨む第1次合宿の18名のメンバーが明かされた。多くが2023年ワールドカップ、パリ五輪を、またその選考段階をほとんど経験していない選手だ。また、11名が同月半ばに行なわれた若手主体の「ディベロップメントキャンプ」から残った者たちである。

 18名の名簿を見ると、隔世の感を覚える。バイレイシャル(両親の人種がそれぞれ異なること)である選手が幾人もいる。また、アメリカの大学でプレーをする者が5名もいる。当然、飛び交う言葉は日本語と英語である。アメリカでプレーをする選手たちは、秋からのシーズンのために再び日本を離れねばならず、トム・ホーバスヘッドコーチ(HC)の敷くバスケットボールの習得ができるのは、夏の間に限られる。

 アジアカップには渡邊(昨シーズン故障が多かったことから身体づくりに専念する判断を下した)、比江島慎(宇都宮ブレックス/昨秋、代表からの勇退を示唆もこの夏発表の代表候補者名簿には名を連ねている)といった古参選手らは出場しない方向のようだ。ちなみに、河村や富永啓生(レバンガ北海道)、馬場雄大(長崎ヴェルカ、今合宿には途中まで参加していた)が7月中旬に行なわれるNBAサマーリーグ後に代表に加わる可能性をホーバスHCは排除していない。

「2月と11月のFIBAウインドウ(国際試合開催時期)には大学生だから来られない。だから今しかないんです」

 ディベロップメントキャンプの際、アメリカでプレーする者たちについてこう述べたホーバスHC。アジアカップにはそのメンバーのなかからどれほど連れて行くかを問われると「アメリカから来ている選手たちがこの合宿だけではもったいないし、経験させたほうがいい」としていた。少なからずこのなかのメンバーからサウジアラビアへ渡航することになりそうだ。

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著者プロフィール

  • 永塚和志

    永塚和志 (ながつか・かずし)

    スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、2019W杯等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験もある。著書に「''近代フットボールの父'' チャック・ミルズが紡いだ糸」(ベースボール・マガジン社)があり、東京五輪で日本女子バスケ代表を銀メダルに導いたトム・ホーバスHC著「ウイニングメンタリティー コーチングとは信じること」、川崎ブレイブサンダース・篠山竜青選手 著「日々、努力。」(ともにベースボール・マガジン社)等の取材構成にも関わっている。

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