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バスケ男子日本代表 スタイルの異なる6歳差のPG兄弟・テーブス海&流河が揃って目指すロス五輪のコート

  • 永塚和志●取材・文・写真 text by Kaz Nagatsuka

6歳差でスタイルの異なるPGのテーブス兄弟(左は海、右は流河) Photo by Kaz Nagatsuka & Sportiva6歳差でスタイルの異なるPGのテーブス兄弟(左は海、右は流河) Photo by Kaz Nagatsuka & Sportiva

後編:バスケ男子日本代表、2028年ロス五輪への船出

トム・ホーバスヘッドコーチの下、2028年ロサンゼルス五輪へ再び始動したバスケットボール日本代表。今年は若手の発掘を意図した代表合宿への選手招集となっているが、なかでもテーブス海とテーブス流河は、異色の兄弟と言えるかもしれない。

年の差は6、ポジションは同じPGだが、そのプレースタイル、そして性格は異なる。

ただ、共に目指しているのは2028年ロサンゼルス五輪。兄弟揃っての目標に向かって、まずは第一歩を踏み出した。

【「まさか彼がこんなに早くA代表に呼ばれるとは」】

 なるほど、6歳の差があるというのもうなずける。

 ふたりの顔だ。21歳の弟・テーブス流河(米ボストンカレッジ)の顔を眺めると、なるほど21歳らしいあどけなさがありありと感じられる。

 一方、兄・テーブス海(アルバルク東京)も無論、そういった時期を経てきたはずだが、年齢とキャリアを重ねてきた今の彼にそんな無垢さはもはやない。

 高3と中1、と言い換えれば、確かに離れている。そんな兄弟が、8月のFIBAアジアカップへ向けて強化を進める男子日本代表の候補として同じコートで練習を続けている。昨年のパリ五輪にも出場している兄の存在はバスケットボールファンの間では馴染みのものとなっているが、その兄と同じジャージーを弟が身につける。

「いや、もう、めっちゃ、変な感じですね」

 7月5、6日に東京・有明アリーナで行なわれるオランダとの強化試合の事前合宿の最中、海は弟とともにプレーをしている状況について問われると、苦笑いに近いような表情でこのように答えた。

「仕事場に弟が来るって変な感じがします」

 違和感は、弟も共有するものだった。

「今日で(合宿は)3日目なんですけど、最初の2日間、本当に変な感じがして、今日やっと実感が湧いたという感じです」

 元プロ選手の父・BTテーブス氏(昨シーズンまで富士通レッドウェーブのHCとしてWリーグ連覇。今シーズンよりアイシンウィングスのディレクターに就任)を持つふたりではあるものの、同じチームでのプレーの経験は従前、なかったという。初めての機会が日本代表活動だというのも、彼らの背中に走るむず痒さを増したところはあったかもしれない。

 海はともにプレーをすることを「変な感じ」としながらも、弟がこれほどまでに早く代表活動に参加するようになるとは考えていなかったという。

「まさか彼がこんなに早くA代表に呼ばれるとは思わなかったので......もしかしたら自分が30歳までA代表に残っていれば30と24で一緒にやれるかなみたいなことは話していましたけど、まさか21ともうすぐ(9月で)27で実現するとは思っていなかったです。それは本当、彼が頑張った結果だなと思います」

 ここ数年は常に代表に呼ばれ、Bリーグでも強豪・アルバルク東京のエースポイントガードとして活躍する海だが、その彼をして同じポジションの流河の能力はほぼすべてにおいて自身を上回っていると言わしめる。

「自分の強みとしては、6歳上っていうところしかないんじゃないですかね。(あとは)経験と体(身長は海が188cmで、流河が184cm)くらいですかね。自分のほうが骨格というか、身長も大きいんですけど、流河は昔からですけど、兄よりスキルがあるってみんなに言われていました」

 選手によっては謙遜をするのかもしれない。だが、1年生から先発を担っていた報徳学園高から渡米し、現在では米大学バスケットボールの最上級リーグのひとつ「アトランティックコーストカンファレンス(ACC)」のチームでプレーをする流河は「お兄ちゃんよりスキルはあるという自信はあります」と外連味なく語っている。食事やトレーニングの成果のお陰でこの1年で12kg体重を増やし、肉体的なたくましさも身にまといつつある。

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著者プロフィール

  • 永塚和志

    永塚和志 (ながつか・かずし)

    スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、2019W杯等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験もある。著書に「''近代フットボールの父'' チャック・ミルズが紡いだ糸」(ベースボール・マガジン社)があり、東京五輪で日本女子バスケ代表を銀メダルに導いたトム・ホーバスHC著「ウイニングメンタリティー コーチングとは信じること」、川崎ブレイブサンダース・篠山竜青選手 著「日々、努力。」(ともにベースボール・マガジン社)等の取材構成にも関わっている。

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