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バスケ男子日本代表 スタイルの異なる6歳差のPG兄弟・テーブス海&流河が揃って目指すロス五輪のコート (2ページ目)

  • 永塚和志●取材・文・写真 text by Kaz Nagatsuka

【兄弟マッチアップは「たぶん、トントンじゃないですか」】

 男子代表のトム・ホーバスヘッドコーチも、テーブス兄弟は「タイプが全然違います」と言いきる。

「海はフィジカルなPG。フィジカリティをよく使っていてパッシングもすごく上手。経験もある。流河のほうが速さをよく使っていて、海も悪くないんですけど、流河のほうがシュートがいい。面白い(存在)ですよ」(ホ―バスHC)

 当たり前のことながら、兄弟といっても別人格である。海もアメリカの大学(ノースカロライナ大ウィルミントン校)でプレーをし、卒業前にBリーグ(2019-20シーズン途中に宇都宮ブレックスに入団)に移っている。その頃の彼の年齢は今の流河と同じくらいであったが、今と変わらず成熟した落ち着きぶりを見せていた印象だ。

 世の中の「弟」がえてしてそうであるように、流河は若い頃の兄と比べても無垢であるように感じられる。ただ兄に言わせれば、子どもの頃の流河はもっと自己主張が強く、「自分のことを神様だと思っているんじゃないかっていうくらい自信満々だった」という。

「あのかわいい弟がこんなに大きくなってみたいな感じですかね。今はまったくかわいくないですね(笑)」(海)

 そんな具合に、憎まれ口を冗談めかしながら述べるが、海自身も言うまでもなく成長の途上にある。平均2.9分の出場で得点もアシストも挙げられなかったパリ五輪での悔しさから、アルバルクでも得点のバリエーションを増やすといった目的意識を明確に持ちながら個人のワークアウトに費やす時間を伸ばした。

「あの(オリンピックの)レベルになるとペイントの中に(NBAミネソタ・ティンバーウルブズのルディ・)ゴベアみたいな選手が待っているので、フローターとか利き手じゃない手でリズムを崩しながら決めるといったことが大事になってくるので、そういうことに取り組んでいます。あとは3Pですね。ドリブルからの3Pは特に課題だったので」(海)

 スキルがあるという流河にしても、大学1年生だった昨シーズンは平均8.5分の出場で同1.6得点だった。トップレベルでやれる選手となるためには、これからの向上こそが肝要となってくる。換言すれば、ここからが勝負だ。所属チームでも代表でもすでに立場を確立している兄は彼にとって「憧れている存在」だ。

 合宿では互いにマッチアップすることもあるそうだ。そんな時、どちらが優勢なのかを問われた流河は、兄に対しての素直な敬意を込めつつ、このように答えた。

「たぶん、トントンじゃないですか。自分がスコアする場面があったり、海が活躍する場面もあるので、どっちがどっちっていうのはないんですけど、彼はもう代表での経験を積んでいるので、本当に落ち着いたプレーをしているなというふうに感じています」

 合宿の参加選手らはアジアカップへ向けての選考の俎上にあるが、大学のシーズンがあり代表活動に頻繁に加わることができない流河にとっては今後、代表に定着していくためには重要な夏である。

 パリ五輪が終わってまだ1年でしかないが、テーブス兄弟が見据えるのは2028年ロサンゼルス五輪で日の丸を背にコートに立つことだ。実の弟とポジション争いをすることについても違和感が拭いきれない様子の海。自身も当然、パリでの雪辱を期す一方で、弟にも「成功してほしいという感情がある」と言う。

「やっぱり、ロスで河村(勇輝)とテーブス兄弟の3人のPGでいけたらなというふうには思っています」

 今後、河村を筆頭にPG争いは激しさを増していきそうだが、そのなかでタイプの違う選手であり人格であるテーブス兄弟がどこまで食い込んでくるのか、興味深い。

著者プロフィール

  • 永塚和志

    永塚和志 (ながつか・かずし)

    スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、2019W杯等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験もある。著書に「''近代フットボールの父'' チャック・ミルズが紡いだ糸」(ベースボール・マガジン社)があり、東京五輪で日本女子バスケ代表を銀メダルに導いたトム・ホーバスHC著「ウイニングメンタリティー コーチングとは信じること」、川崎ブレイブサンダース・篠山竜青選手 著「日々、努力。」(ともにベースボール・マガジン社)等の取材構成にも関わっている。

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