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【男子バレー】髙橋藍はその瞬間、何を思ったか サントリーでのラストゲームを勝利で飾れず

  • 小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya

 髙橋藍(24歳)は、取材エリアで誰よりも長く丁寧に取材に時間を割く。値打ちがないように思える質問にも、言葉を尽くして答える。親しさの度合いはあっても、相手によって態度を変えることもない。

 彼はまるで流れる水だ。定まった形はなく、それでいて彼そのもので、ごく自然に形を変える。川を流れる水が、岩に割れてもしぶきを上げて再びまみえるように、実体は変わらない。

 わかりやすく言えば、生き方に力みがないのだ。だからこそ、絶え間なく変わる勝負の流れのなかでも先手を取れるし、正しく適応できる。緊張はしても楽しめるし、不安は少ない。暗い情念に引っ張られず、成功におごり高ぶらず、一本一本のプレーに集中できる。

「勝負の天才」
 
 髙橋はまさに、その鋭敏さで他の追随を許さない。

SVリーグチャンピオンシップ決勝で大阪ブルテオンに敗れ、下を向く髙橋藍(サントリーサンバーズ大阪) photo by Sunao Noto(a presto)SVリーグチャンピオンシップ決勝で大阪ブルテオンに敗れ、下を向く髙橋藍(サントリーサンバーズ大阪) photo by Sunao Noto(a presto) SVリーグ開幕シーズンはそのスター性を証明した。ベストアウトサイドヒッター賞、ベストレシーブ賞、そしてチャンピオンシップMVPなど、個人タイトルを総なめ。何より、所属するサントリーサンバーズ大阪をSVリーグ初代王者に導いた。イタリア、セリエAから舞い戻った彼は、新時代を担うヒーローになった。

 今シーズンのSVリーグでも、髙橋は総得点数、スパイク決定率、サーブ効果率、レシーブ成功率など、数字を飛躍的に向上させた。肉体改造によって、わずかな脂肪も削ぎ落とした一方、筋量を増加させ、スピード、パワーをつけた効果だろう。チームのレギュラーシーズン1位の原動力になった。チャンピオンシップセミファイナルでも、ウルフドッグス名古屋の希望を砕く一撃を決めた。

「最後の1点を取りきるのが、エースの役割だと思っています。競っている場面で勝ちきることが勝負では必要だと思っています。優勝するためには、そこの強さを求められる。終盤で勝負強さを見せられるか」

 髙橋は少しの気負いもなく言う。勝負におけるストレスへの耐性が驚くほどに強い。ほぼ生来的な勝者だ。

 では、チャンピオンシップファイナルでは何が起こったのか?

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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