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【男子バレー】髙橋藍はその瞬間、何を思ったか サントリーでのラストゲームを勝利で飾れず (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya

【「ポイントを逃してしまった」】

 ただ、髙橋は屈したわけではなかった。2セット目で逆転されたあとも芸術的なフォームのバックアタックで追いすがるなど、最後まで諦めていない。しかし、結局はこのセットを23-25で落とした。3セット目も多彩なスパイクを見せた。背面ショット、招き猫ショット、ブロックアウト......。荒れ狂う波のようだった西田のスパイクも、連続ブロックで止めた。流れを戻す最善策は相手エースを黙らせることだ。

――髙橋選手はブロックでも力をふり絞り、流れを変えるように奮闘していたように映りました。

 彼は手を後ろに組んだまま、真っ直ぐに目を見て言った。

「自分がブロックで貢献するシチュエーションは少ないんですけど、"ブロックポイントはチームを救う"という意識でした。何より西田選手もすごく(波に)乗っていたので、少しでも勢いを止めるためにもブロックで勝負しました」

 しかし、流れは変えられなかった。濁流のようになったブルテオンの猛攻を防げない。3セット目を22-25で落とすと、4セット目は25-20で奪い返したが、5セット目は9-15と力尽きた。

 第3戦、チームは完全に流れを失っていた。

「勢いを持ってくるポイントを逃してしまったことが、落としてしまった要因かなと思います」

 髙橋はそう言う。決着がついたあと、無数の感情を処理できなくなった彼は、コート上で涙を流していた。今シーズン限りでチームを退団する彼にとって、サントリーでの最後の試合だった。

「終わった瞬間はいろんな感情があって......負けて悔しい思いはあるし、このチームが終わってしまう寂しさもあって......ディマ(ムセルスキー)が最後のシーズンだったからこそ"勝って終わりたかった"という感情もあって。自分自身が、第3戦でチームを勝つ方向へ導くパフォーマンスを出しきれなくて......ファイナルは1点が勝負なので、それを取りきる選手になれるように......」

 試合後の会見に登壇した髙橋は、敗北を糧にすることを誓っていた。ひとつひとつの勝負を乗り越えていく姿こそ、極上の物語になる。流れる水はやがて広い海へ流れ出すのだ。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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