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錦織圭が試合直前に棄権した背景に「超高速テニス」の影響大 西岡良仁も「身体を犠牲にせざるを得ない」

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

 日本のテニスファンの期待と注目を集めた、マイアミ・オープンでの錦織圭と西岡良仁の対戦は、試合当日の朝、錦織が「腰の痛み」を理由に棄権を表明したため、実現することはなかった。

 もっとも、両選手ともに身体の状態が万全ではないことは、ある程度は周知の事実ではあった。錦織は先週アリゾナで行なわれたATPチャレンジャー大会でベスト4進出。ただ、4試合を終えた時点で、「身体がだいぶ、疲労が溜まっている」と明かしていた。

 一方の西岡も肩の関節炎のため、出場予定だった3月上旬のBNPパリバ・オープン、さらにアリゾナのチャレンジャーも欠場。今回も会場入りはしたものの、試合に出られるかどうかは様子見......という状況だった。

錦織圭を棄権に追い込んだものとは...... photo by Getty Images錦織圭を棄権に追い込んだものとは...... photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る 果たして、錦織に代わって出場したユーゴ・ガストン(フランス)との対戦で西岡は、第1セットを4-6で落とし、第2セットが1-3の時点で棄権を申し出る。「圭くんが相手なら......」と必死に調整したものの、「バックハンドの高いボールが打てない」状態だった。

 日本のテニス界を長く牽引してきた錦織と西岡の2トップが、特にここ数年ケガに苦しめられているのは、決して偶然ではないだろう。

 昨年末に35歳を迎えた錦織は、テニス界では小柄な178cm。今年30歳を迎える西岡は、さらに小さい170cm。それでも、両者ともに類稀(たぐいまれ)なる技術とセンスで世界と戦ってきたが、ここ最近、フィジカルの差は埋めがたいものになってきているという。

 特に顕著なのが「ショット速度の向上」だというのは、ふたりが口を揃える点。

 西岡はコロナ禍が明けた頃から、「若手の打つショットのスピードが上がった」と指摘していた。2021年末以降、ツアーを離れることの多かった錦織も昨年秋ごろから度々、「最近の選手の打つ球が速い」ことに言及している。

 その事実を錦織が、何より身をもって痛感したのが、先週のアリゾナ大会・準決勝の一戦だった。

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著者プロフィール

  • 内田 暁

    内田 暁 (うちだ・あかつき)

    編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。

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