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錦織圭が試合直前に棄権した背景に「超高速テニス」の影響大 西岡良仁も「身体を犠牲にせざるを得ない」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

【錦織も西岡もスライスを練習中】

 この試合で錦織が相対したのは、18歳のジョアン・フォンセカ(ブラジル)。約1年前にプロ転向し、すでにチャレンジャー3大会優勝。今年1月の全豪オープンでは予選を突破し、本戦初戦で第9シードのアンドレイ・ルブレフ(ロシア)をストレートで破る衝撃のグランドスラムデビューを飾った「テニス界の新星」だ。

 さらに今年2月には、アルゼンチン・オープンでATPツアー初優勝。ちなみに18歳5カ月での優勝は、錦織が17年前に記録した18歳2カ月に比肩する数字である。

 そのフォンセカを錦織は、「めちゃめちゃ気になる」存在だと言い、「ファアハンドの強さが光る、いい選手」だと形容した。

 そうして実際に対峙した時、彼は自身の鑑識眼の確かさを知っただろう。18歳の放つボールの速さと深さ、そして展開の速さに押され、打ち合いで徐々に後手に回る。「使いたい」と言っていたスライスも、時間的余裕がないと思うように操れない。

「(ボールが)速かったですね。ほかの選手より展開も速いし、少しでも甘いボールを与えると振ってくる。その速さに、ちょっとついていけなかったですね」

 試合後に錦織は、うつむき加減にそう言った。

 一方、コロナ禍直後の過渡期の真っただ中で戦ってきた西岡は、「超高速テニスに対抗するためには、身体を犠牲にせざるを得ない」と、かねてより口にしてきた。

 フォアハンドのグリップを薄くし、フラット気味に叩くようにしたのも、そのひとつ。結果、ひじをはじめ全身にかかる負荷が増えたと、本人もコーチも明言していた。今回の肩の痛みも新世代のテニスへの対抗策が影響していると、テニス界きっての戦略家は言う。

「圭くんがスライスを使おうとしているとのことですが、僕も同じで、スライスをめちゃめちゃ練習するようになったんです」と、西岡が明かす。

「物理的に届かないボールが来ると、スライスで返して時間を作るしかない。低いスライスは、まだみんな打ち返すのが難しいと思うんです。だから、相手のバックの深いところにスライスを返す練習をすごくしてきたんですが、その影響もあって肩が痛くなったんです」

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