高橋大輔と浅田真央が見つめ合う『スターズ・オン・アイス』でのコラボ 「うまくいっている、よね?」
『スターズ・オン・アイス』でコラボした浅田真央と高橋大輔(4月5日撮影)この記事に関連する写真を見る
【高橋大輔が担う"導く使命"】
4月4日、大阪。東和薬品RACTABドームで開催されるアイスショー『スターズ・オン・アイス』(4月5、6日)の前日練習だった。
サブリンクで高橋大輔は、浅田真央、村元哉中、友野一希と4人でのコラボナンバー『Silhouette(シルエット)』の仕上げに臨んでいた。メインリンクでは男女8人のグループナンバー、B'zの『ultra soul(ウルトラ・ソウル)』が何度も繰り返し鳴り響く。4人は手元のスマートフォンから出る音を拾って、一つひとつの動きを確認しながら滑っていた。
高橋の滑りには、ほのかな色気が漂った。重心の低いスケーティングで、力強く氷を押し、エッジを最大限まで倒す。彼はシルエットだけで違いを見せられる。優れた感性をスケーティングに落とし込み、全身をくねらせながら表情も恍惚とさせ、伸ばした指先まで艶めかしく動かした。
高橋の赤い色を入れた髪は長めで、黒いヘアバンド姿だった。体が温まり、汗がにじんできたのか。黒っぽい上着を脱ぐと、下は蛍光イエローのトレーナーだった。子どもの頃から周りが驚くほど、「服装の合わせ方にはこだわりがあった」と言うだけに、彼だけの着こなしだろう。センスは独自で天才的に見えるが、それは生きるなかで研鑽を積んだものだ。
氷上に立った時、高橋は何者かになり代われる。それは競技者だった過去も、表現者である今も変わらない。あるいは『氷艶』『滑走屋』などの舞台を経た現在、別格の空気を醸しだしつつある。
「こんなに長く氷の上に立っていたことはない」「プロフェッショナルを感じました」「ここまでこだわるんだなって」
高橋と一緒に過ごしたスケーターたちはそう言って、劇的な成長を遂げている。今は、「導く」という唯一無二の使命を果たしているのだ。
今回の『スターズ・オン・アイス』、高橋はどんな姿を示すのか?
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著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。