高橋大輔と浅田真央が見つめ合う『スターズ・オン・アイス』でのコラボ 「うまくいっている、よね?」 (3ページ目)
【浅田真央を堂々とリード】
その日、高橋のスケートが特別に映った理由はもうひとつあった。それは、コラボナンバーを浅田と滑っていた点だろう。ふたりはフィギュアスケートの歴史にその名を刻み、「彼らの前後にフィギュアスケートが存在している」と言っても過言ではない。
アイスダンスでも日本のトップに立った高橋は浅田の手を取ると、たおやかに肩を抱き寄せ、堂々とリードしていた。そのスケーティングの優雅さはシングル時代から代名詞だったが、アイスダンスを経て異境に入っている。今回はふたりが見つめ合う一瞬、「永遠の今」をファンは感じられるかもしれない。
もっとも、高橋が村元と滑るパートは、誰も入る余地のない濃密さだった。"かなだい"として、たった3年で世界選手権トップ10まであと一歩に迫った挑戦は、今や伝説的である。カップル競技を活性化させ、フィギュアスケート人気を新たに開拓した。
今回、高橋と振り付けをつくってきた村元は『スターズ・オン・アイス』の会見でこう説明している。
「今回のコラボはスペシャルで。ちょうどさっき、(友野)一希と一緒に合流してできたばかり。このあとも練習があるんですけど、いい流れではあるので。完成度としては、もうちょっとクオリティを上げていかないと、ですが。一日で仕上げたいと思います!」
その言葉どおり、サブリンクの練習ではディテールまでこだわっていた。4人が調和したナンバーは、「フィギュアスケートのひとつの時代」の叙情を感じられるかもしれない。
「現役を引退して、久しぶりに『スターズ・オン・アイス』に参加させてもらうことになりました。大阪は住んでいたことがあるので、久しぶりに楽しみながら!」
高橋が言う「楽しむ」は、「楽しませる」と同義である。大阪公演のあと、『スターズ・オン・アイス』は4月12、13日に札幌でも行なわれる。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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