「ワールドカップ優勝」宣言の森保ジャパンに、セルジオ越後「今の豪州、サウジにホームで勝ちきれない国が優勝を語るのはちょっと無理がある」
セルジオ越後の「新・サッカー一蹴両断」(5)
W杯本大会に向けて自信を見せる森保監督 photo by Yanagawa Go!
早くも8大会連続となるワールドカップ出場が決定。サッカー日本代表が2026年北中米ワールドカップのアジア最終予選で圧倒的な強さを見せつけた。ご意見番のセルジオ越後氏に、その戦いぶりを振り返ってもらった。
【W杯予選は結果がすべてなので素直に評価したい】
いつの間にか森保一監督や選手たちが「W杯優勝」と言うようになっているけど、優勝を語る前にまだ一度も見たことないベスト8進出を今度こそ見せてほしい。何しろ僕ももう今年で80歳だからね。
日本代表が3月20日に行なわれたバーレーン戦に2-0で勝ち、世界一番乗りでのW杯本大会出場を決めた。
バーレーン戦は、前半から動きがちょっと硬く、ボールを回すリズムも遅くて、相手を脅かすシーンが少なかった。開始早々の遠藤航のゴールがVARで取り消されたけど、あれが認められていたら、また違った展開になっていたのかもしれないね。ただ、それでも、66分に途中出場の鎌田大地がゴールを決めて、そこからはラクになった。
選手個々で見れば、やっぱり久保建英がよかった。チームの攻撃の中心として1得点、1アシストとしっかり結果を出した。
あとは堂安律を挙げておきたい。あまり目立たないんだけど、守備で効いていた。単にハードワークするだけでなく、ポジショニングがいい。本来は攻撃が持ち味の選手なのに、自分に与えられたポジション、役割を理解して、チームの大きな助けになっていた。そういう真面目で賢い選手がいると助かるよ。
バーレーン戦の5日後に行なわれたサウジアラビア戦は、先発6人を入れ替えて臨んだ。自陣に引いて守備を固める相手に対して、日本はボールを保持するものの、中盤での横パス、足下へのパスが多く、なかなか攻撃の形をつくれず、スコアレスドローに終わった。
すでにW杯出場を決めていて無理をする必要がなく、また、スタメンを大幅に入れ替えていたとはいえ、貴重な地上波のテレビ中継があったわけで、普段はサッカーを見ない人にもアピールするチャンスだった。それだけに無得点は残念。
また、この試合で気になったのは、サウジがほとんど攻めてこないのに、森保監督が選手交代こそすれ、システムを変えなかったこと。相手のワントップを最終ラインの3人で見る必要はなかったと思う。3バックから4バックに変更して、もっとサイドからの攻撃に人数をかけるべきだった。実際、両ウイングバック、特に左の中村敬斗は積極的に仕掛けようとしていたけど、孤立気味だった。臨機応変な試合運びという点で課題を残したね。
昨年9月に開幕した最終予選は、ここまでの8試合を終えて、6勝2分け24得点2失点(残り2試合)。過去にこれほど圧倒的な数字を出したことはなかった。W杯予選は結果がすべてなので、まずは素直に評価したい。
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著者プロフィール
セルジオ越後 (せるじお・えちご)
サッカー評論家。1945年生まれ、ブラジル・サンパウロ出身。17歳の時に名門コリンチャンスのテストに合格し、18歳の時にプロ契約を結び、MF、FWとして活躍した。「エラシコ」と呼ばれるフェイントを発案し、ブラジル代表の背番号10を背負った同僚のリベリーノに教えたことでも有名。1972年に日本リーグの藤和不動産(湘南ベルマーレの前身)から誘いを受け、27歳で来日。1978年から日本サッカー協会公認の「さわやかサッカー教室」で全国を回り、開催1000回以上、のべ60万人以上を指導した。H.C.日光アイスバックスのシニアディレクター。日本アンプティサッカー協会最高顧問。公式ホームページ【http://www.sergio-echigo.com】