「久保建英のチーム」になったサッカー日本代表に、セルジオ越後「ワールドカップまでの課題は、選手層の薄さとマッチメイク」
セルジオ越後の「新・サッカー一蹴両断」(6)
3月の2連戦で日本代表の攻撃を牽引した久保建英 photo by Yanagawa Go!
世界最速で2026年北中米ワールドカップ出場を決めたサッカー日本代表。森保一監督も選手も口をそろえて「ワールドカップ優勝」を公言するなど意気は盛んだが、ご意見番のセルジオ越後氏に本大会までの課題を聞いた。
【メンバーが入れ替わるとうまく機能しない】
4年前のW杯最終予選の日本代表は伊東純也のチームだったよね。右サイドの縦の突破に加えて高い決定力も兼ね備え、攻撃を牽引していた。
今のチームはどうだろう。3月のバーレーン戦(2-0)、サウジアラビア戦(0-0)では久保建英が攻撃の中心にいた。特にバーレーン戦は十分なスペースがあるなか、ゴールにアシストにと結果も出して、本人もプレーしていて楽しかったんじゃないかな。スペインで経験を積んで、体も強くなったことが自信につながっているのだろう。厳しいことを言えば、まだ好不調の波が目立つけど、それを少なくできれば、誰もが認める日本の顔になれる。期待したいね。
ここまでの最終予選を振り返ると、本大会に向けての日本代表の課題がはっきり見えてきた。
まずは選手層だ。毎回の招集メンバーにサプライズはなく、森保一監督はほとんど同じ顔ぶれを選んできた。しかも、ケガなどの事情がない限りスタメンを変えることは少なく、基本的にはメンバーを固定してきた。
それが3月のサウジ戦では、5日前のバーレーン戦から先発を6人も入れ替えた。すると、自陣に引きこもる相手の守備を思うように崩せず、得点を奪えなかった。ベストメンバーならよいサッカーをできるけど、メンバーが変わるとうまく機能しない。そんな印象だ。短期決戦のW杯本番に向けては、もっと計算の立つ選手を増やす必要がある。
特に気になるのはボランチだね。遠藤航、守田英正のコンビは鉄板。抜群の安定感だ。だからこそ、ふたりのどちらかが故障で離脱でもしたら、誰がその穴を埋めるのか。
サウジ戦は、肉離れの影響で離脱した守田の代わりに田中碧が先発。悪くないプレーを見せたけど、守田からポジションを奪えるかといったら難しい。73分には遠藤に代えて旗手怜央を入れ、シャドーだった鎌田をボランチに下げ、83分には鎌田に代えて南野拓実を入れ、旗手をボランチにと、森保監督はいろいろと手を打ったけど、結局、誰も流れを変えられなかった。
個人的には、藤田譲瑠チマを途中出場でもいいから試してほしかった。彼はパリ五輪代表のキャプテンでリーダーシップがあり、なおかつ守田と似たようなスマートなプレーのできるボランチ。実際、五輪本番でもいいプレーを見せていた。彼がサウジをどうやって崩すのかは見てみたかったね。毎回代表に呼ぶけど、結局、使わないというのはかわいそうだよ。
ワントップもほかのポジションに比べて物足りない。上田綺世は最終予選ではそれなりに活躍したけど、フェイエノールトでのプレーぶりを見ると、W杯本番で対戦するような強豪相手にどこまでできるのか不安がある。ドイツでプレーしていた時の大迫勇也やかつての高原直泰といった選手を超えられていない。
サウジ戦で先発した前田大然、昨年11月の2試合(インドネシア戦、中国戦)で先発した小川航基、今回2年ぶりに代表復帰した町野修斗、今後は彼らももっと試していくべきだ。
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著者プロフィール
セルジオ越後 (せるじお・えちご)
サッカー評論家。1945年生まれ、ブラジル・サンパウロ出身。17歳の時に名門コリンチャンスのテストに合格し、18歳の時にプロ契約を結び、MF、FWとして活躍した。「エラシコ」と呼ばれるフェイントを発案し、ブラジル代表の背番号10を背負った同僚のリベリーノに教えたことでも有名。1972年に日本リーグの藤和不動産(湘南ベルマーレの前身)から誘いを受け、27歳で来日。1978年から日本サッカー協会公認の「さわやかサッカー教室」で全国を回り、開催1000回以上、のべ60万人以上を指導した。H.C.日光アイスバックスのシニアディレクター。日本アンプティサッカー協会最高顧問。公式ホームページ【http://www.sergio-echigo.com】