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クリスティアン・ヴィエリの全盛期はまさに無双 相手DFを圧倒する問答無用のパワーファイター

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

世界に魔法をかけたフットボール・ヒーローズ
【第20回】クリスティアン・ヴィエリ(イタリア)

 サッカーシーンには突如として、たったひとつのプレーでファンの心を鷲掴みにする選手が現れる。選ばれし者にしかできない「魔法をかけた」瞬間だ。世界を魅了した古今東西のフットボール・ヒーローたちを、『ワールドサッカーダイジェスト』初代編集長の粕谷秀樹氏が紹介する。

 第20回は、1990年代後半にヨーロッパ最強リーグと称されたイタリア・セリエAで、飛びきりの存在感を示した大型ストライカーを紹介したい。クリスティアン・ヴィエリだ。「重戦車」の愛称が実にぴったりな、唯一無二のプレースタイルは誰も忘れることはない。

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クリスティアン・ヴィエリ/1973年7月12日生まれ、イタリア・ボローニャ出身 photo by AFLOクリスティアン・ヴィエリ/1973年7月12日生まれ、イタリア・ボローニャ出身 photo by AFLOこの記事に関連する写真を見る 問答無用のパワーファイターだった。

 フェイクを用いず、真正面から相手DFに挑む。ラグビーのFWを連想させる頑丈な体型は、五分と思われたどつき合いでも圧勝する。エルボー、キッキングはケンカ上等の覚悟で跳ね返す。重厚感や存在感など、その威風堂々たる佇(たたず)まいは、まさに「真正9番」だった。

 クリスティアン・ヴィエリである。

 プロキャリアは波乱万丈だ。トリノに始まり、ピサ、ラベンナ、ベネツィア、アタランタ、ユベントス、アトレティコ・マドリード、ラツィオ、インテル、ミラン、モナコ、サンプドリア、アタランタ、フィオレンティーナ、アタランタ......。17年で14回も移籍している。

 寡黙で気難しいとされた本人の性格が災いしたのか、エージェントの交渉術に問題があったのか。いずれにせよ、短いサイクルで移籍を繰り返す選手は信用度に欠ける。

 それでも、ヴィエリはいくつかのクラブで強烈なインパクトを残し、カルチョ・イタリアーノ史上に残るFWのひとりだ。

 その名が日本にも知れ渡ったのは1995-96シーズンだろう。21試合・9ゴールと平均的な数字に終わったものの、パワフルなドリブル突破からシュートを決めたかと思えば、絶妙のボールコントロールからテクニカルな一撃をゴールネットに突き刺す。打点の高いヘディングも驚異的だった。「イタリア代表の明日を担う逸材」と各方面から高く評価された。

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著者プロフィール

  • 粕谷秀樹

    粕谷秀樹 (かすや・ひでき)

    1958年、東京・下北沢生まれ。出版社勤務を経て、2001年、フリーランスに転身。プレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、海外サッカー情報番組のコメンテイターを務めるとともに、コラム、エッセイも執筆。著書に『プレミアリーグ観戦レシピ』(東邦出版)、責任編集では「サッカーのある街」(ベースボールマガジン社)など多数。

【図】ヴィエリが愛した古巣インテルの2024-25シーズン基本布陣

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