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サッカー日本代表で輝く4人のアタッカー 中村敬斗の決定力を生かした「ダブル偽9番システム」は可能か

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

西部謙司が考察 サッカースターのセオリー 
第42回 中村敬斗

 日々進化する現代サッカーの厳しさのなかで、トップクラスの選手たちはどのように生き抜いているのか。サッカー戦術、プレー分析の第一人者、ライターの西部謙司氏が考察します。

 今回は、スタッド・ランスと日本代表でプレーする左ウイング、中村敬斗をピックアップ。優れたアタッカーが多い日本代表のなかでも、際立った特徴があります。

サッカー日本代表のアタッカー陣のなかで抜群の決定力を持つ中村敬斗 photo by Kishiku Toraoサッカー日本代表のアタッカー陣のなかで抜群の決定力を持つ中村敬斗 photo by Kishiku Toraoこの記事に関連する写真を見る

【4本の槍のひとり】

 日本代表は4本の槍を持っている。右に伊東純也、久保建英。左は三笘薫、中村敬斗。サイドから仕掛けてチャンスを作り、シュートを放つ。それぞれクラブチームでもその威力を発揮していて、日本代表のサイドアタックは強力な武器になっている。

 ただし、この4人を同時起用するのはW杯を考えると現実的ではない。アジア予選のオーストラリア戦では、1点リードされていた後半に三笘をシャドーへ移動させて左ウイングバックに中村を投入。ダブルウイングで半ば強引に同点にした。

 右も久保と伊東のコンビでこちらもダブルウイングなのだが、伊東が外、久保が中で、左の三笘&中村のような交互に外に出て仕掛けていくダブルウイング感はなかった。ただ、いずれにしてもW杯でこれがメインシステムになるとは考えにくい。どうしても得点がほしい場合のオプションだろう。

 せっかくの4本の槍を並べられないのはもったいない気もするが、逆にそれが日本の武器になるかもしれない。

 4人はそれぞれ特徴が違う。しかもいずれも極めてクオリティが高い。例えば、久保のドリブル突破が研究されて威力を発揮できなくても、途中で伊東と交代すれば相手は対応に戸惑うだろう。繊細なタッチ、左利きでカットイン型の久保から、豪快な縦突破とロングクロスの伊東ではまるでタイプが違うからだ。同じことは左の三笘、中村にも言えて、さらに堂安律、前田大然もまた特徴が違う。

 W杯はノックアウトステージに入れば延長戦がある。パワーが落ちてきたところでカーレースのタイヤ交換のように交代を使えるのはアドバンテージだ。普通は先発メンバーが交代すれば質は落ちるものだが、日本の場合はそれがない。シンプルにパワーアップし、さらに違うタイプに代わるのは相手にとってかなりやっかいであるはずだ。

 2026年W杯は本大会参加国が48チームに拡大したため、ノックアウトステージはラウンド32からになる。日本がベスト8入りするには、ノックアウトステージで2度勝たなければならないわけで、優勝するにはこれまでより1試合多く戦うことになる。延長やPK戦の連続になる可能性は十分あり、その時にタイヤ交換方式は疲弊を防ぐ効果を発揮するのではないか。

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著者プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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