「ワールドカップ優勝」宣言の森保ジャパンに、セルジオ越後「今の豪州、サウジにホームで勝ちきれない国が優勝を語るのはちょっと無理がある」 (2ページ目)
【メディアまで「W杯優勝」とファンを煽るのはいかがなものか】
ただ、その一方で、対戦相手の状況やアジアの本大会出場枠の増加(4.5→8.5)を考えれば、ある意味、当然の結果とも言える。正直、驚きはない。
日本が入ったグループの現在の順位を見ると、1位が日本、2位がオーストラリア、3位がサウジアラビアと、「3強」と言われた事前の予想通りの展開になっている。ほかのグループを見ても、イランも本大会出場を決め、たぶん韓国も問題なく突破するだろう。おなじみの顔ぶれが順当に勝ち点を積み上げている。
また、日本が圧倒的な強さを見せたというけど、グループ内のライバルであるオーストラリアとサウジとの直接対決ではここまで1勝2分けだ。オーストラリアは昔のようなスーパーなタレントが不在。サウジも最近は国内リーグに大物外国人が増えた影響で、代表選手が試合に出られなくなっている。さらに今回はラマダン(イスラム教の断食月)のタイミングに重なった。コンディションは悪かっただろう。
そんな万全ではない両チームに対して、ホームで2分けと勝ちきれなかった。せっかく日本には「勝って兜の緒を締めよ」といういい言葉があるのだから、メディアもファンもそれを思い出すといいよ。
最初にも言ったように、森保監督も選手も「W杯優勝」と高い目標を掲げていて、それはそれで構わないと思う。振り返れば、2014年ブラジルW杯の時も本田圭佑が「優勝を狙う」と言っていた(結果は1勝もできずにグループリーグ敗退)。
ただ、メディアまでそれに乗っかって、「史上最強」「W杯優勝だ」とファンを煽るのはいかがなものか。視聴率が欲しいテレビ局がそういうことを言いたいのはわかるんだけど、もっと冷静な意見や評価があっていい。
サウジ戦の前日会見では、海外の通信社の記者から森保監督に「日本はW杯でベスト8に進出したことがないのに、なぜ優勝が目標なのか」と質問があった。僕も同感。今のオーストラリア、サウジにホームで勝ちきれない国がW杯優勝を語るのはちょっと無理がある。焦らず地に足をつけて、まずはベスト8進出を達成してほしい。
(6)>>「久保建英のチーム」になったサッカー日本代表に、セルジオ越後「ワールドカップまでの課題は、選手層の薄さとマッチメイク」
著者プロフィール
セルジオ越後 (せるじお・えちご)
サッカー評論家。1945年生まれ、ブラジル・サンパウロ出身。17歳の時に名門コリンチャンスのテストに合格し、18歳の時にプロ契約を結び、MF、FWとして活躍した。「エラシコ」と呼ばれるフェイントを発案し、ブラジル代表の背番号10を背負った同僚のリベリーノに教えたことでも有名。1972年に日本リーグの藤和不動産(湘南ベルマーレの前身)から誘いを受け、27歳で来日。1978年から日本サッカー協会公認の「さわやかサッカー教室」で全国を回り、開催1000回以上、のべ60万人以上を指導した。H.C.日光アイスバックスのシニアディレクター。日本アンプティサッカー協会最高顧問。公式ホームページ【http://www.sergio-echigo.com】
2 / 2