検索

【F1】角田裕毅の的確な提案にレッドブルのエンジニアも驚き 「みんなユウキのコメントに耳を傾けていた」

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

F1第3戦・日本GPレビュー(後編)

◆レビュー前編>>

 日曜に予報されていた雨は、朝にひとしきり降って路面を濡らしたが、やがて1コーナー方面には晴れ間ものぞき始めた。

 ウェットに賭けて重いリアウイングを選んだ角田裕毅(レッドブル)にとっては、恨めしい天気だった。

鈴鹿に集まったファンの声援に応える角田裕毅 photo by BOOZY鈴鹿に集まったファンの声援に応える角田裕毅 photo by BOOZYこの記事に関連する写真を見る 鈴鹿は抜きどころが少なく、ストレートが遅ければオーバーテイクは難しい。

 角田は果敢なオープニングラップのバトルで、ターン1〜2でリアム・ローソン(レーシングブルズ)のインをうかがいながら、引くべきところは引き、スプーンでチャンスを見つけてインに飛び込み、13位にポジションを上げた。

 だが、その後はトレイン状態のレースとなる。ペースは周囲の中団勢よりも明らかに上だったが、身動きが取れないレースが続いた。

「雨にならなかったのも不運でしたし、タイヤのデグラデーション(性能低下)が大きくなればまだ展開としてはよかったんですけど、今日はデグラデーションがほぼゼロだったので、すべてが僕にとってはよくない方向にいってしまいました」

 今年は東コースが再舗装され、グリップが上がったことでタイヤにも優しくなり、デグラデーションがほとんど発生しない状況になった。

 ほとんど動きのないモナコのような退屈なレースだった、というネガティブな声もファンや関係者の間で散見されたが、鈴鹿サーキットは今も昔も変わっていない。

 そもそも、今のF1はマシン性能が拮抗しているため、バトルは難しい。それを可能にしているのは、タイヤのデグラデーションをいかに抑えるか、どのようなタイヤ戦略を採るかであり、そのタイヤ差によって1秒以上の差を生み出してバトルを繰り広げているのだ。

 だが、デグラデーションそのものが存在しなければ、マシンの差だけの勝負になる。これではどんなドライバーでもバトルはできないのだ。

 それは角田にとっても同じで、22周目に後方のニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー)が動いた直後にピットインし、前のピエール・ガスリー(アルピーヌ)をアンダーカットすることに成功した。

 だが、その後は再びフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)に抑え込まれ、重いリアウイングをつけた角田のマシンではストレートで並びかけるところまで行けずに終わってしまった。

1 / 3

著者プロフィール

  • 米家峰起

    米家峰起 (よねや・みねおき)

    F1解説者。 1981年1月31日生まれ、兵庫県出身。F1雑誌の編集者からフリーランスとなり2009年にF1全戦取材を開始、F1取材歴14年。各種媒体に執筆、フジテレビNEXTやYouTube『F1LIFE channel』での解説を務める。

【写真】F1ウィリアムズ育成ドライバー・松井沙麗(当時13歳)インタビューカット集

キーワード

このページのトップに戻る