検索

渡辺久信が驚愕した3人の好打者 「空振りした時の音がマウンドまで...」「通用した唯一のボールはスッポ抜けだけ」

  • 飯尾哲司●文 text by Iio Tetsuji

渡辺久信インタビュー(中編)

 西武のエースとして活躍した渡辺久信氏に現役時代に対戦したなかで、特に印象に残った打者を3人挙げてもらった。それぞれの打者の凄みを振り返りながら、自身の移籍理由、監督たちとのエピソード、さらにはセ・パの野球の違いについても語ってもらった。

西武時代は最多勝を3回獲得するなど、黄金期のエースとして活躍した渡辺久信氏 photo by Sankei Visual西武時代は最多勝を3回獲得するなど、黄金期のエースとして活躍した渡辺久信氏 photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る

【推定162mの特大アーチを被弾】

── 対戦して印象に残っている打者を3人挙げてください。

渡辺 私が若かった頃、一番印象に残っているのは門田博光さん(南海ほか)です。当時、ナンバーワンの打者でした。特に40歳だった1988年には打率.311、44本塁打、125打点という成績で、「不惑の本塁打王」と呼ばれました。通算本塁打は567本で、王貞治さん(868本)、野村克也さん(657本)に次ぐ歴代3位です。

── どのあたりがすごかったのでしょうか?

渡辺 公称170センチと小柄ながら、とにかくスイングスピードが速かった。空振りした時に「ブルン!」と音がして、それがマウンドまで聞こえるほどでした。ほかの投手も「あの音、聞こえた?」と話題になるほどでした。いざミートされると、打球がまるでピンポン球のようにスタンドまで飛んでいく。とにかくすばらしい打者でしたね。

── 2人目は誰でしょうか?

渡辺 外国人選手では、ブーマー・ウェルズ(阪急ほか)が印象に残っています。1990年にラルフ・ブライアント(近鉄)が、東京ドームの天井スピーカーに当てた推定170メートルの打球が最長とされていますが、それ以前の記録は、1988年に私がブーマーに西宮球場で打たれた場外ホームラン。推定162メートルでした。

 ブーマーは打球の軌道が特徴的で、いわゆる高い放物線を描く"アーチストタイプ"ではなく、カット気味に放ったようなライナー性の打球がそのまま伸びていく感じです。長打力はもちろんですが、三冠王を獲ったように巧打のアレベージヒッターで、頭のいい打者でした。

1 / 3

著者プロフィール

  • 飯尾哲司

    飯尾哲司 (いいお・てつじ)

    静岡県生まれ。『週刊ベースボール』編集部出身。野村克也氏『私の教え子ベストナイン』『リーダーとして覚えておいてほしいこと』、元横浜高野球部長・小倉清一郎氏『小倉ノート』をはじめ、書籍の企画・取材・著書多数。プロ野球現場取材歴35年。早稲田大学大学院修士課程修了。学術論文「エリートアスリートはなぜセカンドキャリアで教員を選択したのか:プロ野球選手とJリーガーの事例をもとに」(スポーツ産業学研究, Vol.33, No.1, p.63-73,2023.)

フォトギャラリーを見る

キーワード

このページのトップに戻る