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【プロ野球】佐々木朗希163キロに「別格だと思った」 高校BIG4で最も自信がなかった左腕・及川雅貴が虎の鉄腕になるまで

  • 菊地高弘●文 text by Takahiro Kikuchi

阪神・及川雅貴インタビュー(前編)

「勝ってるところは......とくにないですね」

 首を傾げながら、申し訳なさそうに答える及川雅貴の顔が頼りなく映った。2019年3月。春の選抜初戦の試合前、私は及川にこんな質問をした。

── 及川投手の同学年にはすばらしい投手が何人もいますが、自分が誰にも負けないと思っているところはどこですか?

昨シーズン、リーグトップの66試合に登板した阪神・及川雅貴 photo by Yoshihiro Koike昨シーズン、リーグトップの66試合に登板した阪神・及川雅貴 photo by Yoshihiro Koikeこの記事に関連する写真を見る

【「高校BIG4」と称された逸材】

 名門・横浜のエース左腕である及川は、「高校BIG4」と称される世代トップランナーのひとりに数えられていた。ほかの3人は、大船渡・佐々木朗希(現・ドジャース)、星稜・奥川恭伸(現・ヤクルト)、創志学園・西純矢(現・阪神)。のちに日本を代表する左腕に進化する興南・宮城大弥(現・オリックス)を差し置いて、高校2年にして最速153キロを計測した及川が錚々たるメンバーに加わっていた。

 だが、及川は強烈な同期のライバルに敵愾心を示すことはなかった。当時の及川にとっては、それどころではなかったのかもしれない。7年後のいま、当時の心境を尋ねると、及川はこんな本音を漏らした。

「自分のことは自分が一番わかっていますから。『BIG4』と言ってもらえることはうれしかったですけど、自分が彼らと比べものにならないと思っていたのも事実です。日本の高校生でトップの4人に入るレベルじゃないなと。そもそも、思ったフォームで投げられない状態でしたから」

 そして、及川は「強いて言えば、(勝っているのは)フィールディングくらいかな」と自嘲気味に笑った。

 高校時代の及川は絶えず「フォーム探しの旅」に出ていた。「勝ってるところはない」と弱気な発言をした春の選抜にしても、不安定な制球を露呈。明豊(大分)に大量点を奪われ、5対13で初戦敗退を喫している。

 及川にとって、強烈な体験があった。選抜直後に実施された、高校日本代表候補の強化合宿。代表候補同士による紅白戦で、佐々木が信じられないような剛速球を投げ込んだ。バックネット裏でスカウトが構えたスピードガンには、「163キロ」という異次元の数字が表示されていた。

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著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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