【プロ野球】佐々木朗希163キロに「別格だと思った」 高校BIG4で最も自信がなかった左腕・及川雅貴が虎の鉄腕になるまで (2ページ目)
「ベンチで見ていても、『こんなにボールの音が聞こえるんだ!』と驚きました。ボールが風を切る音まで聞こえてくるんです。その時の捕手の藤田(健斗)はいま阪神でチームメイトなんですけど、フォークが捕れなくて股を抜かれたのを覚えています。ちょっと話しただけでも、自分の知識にはないような言葉が出てくる。自分の勉強不足を感じましたし、もう別格だなと思いました」
同年秋のドラフト会議で、及川は阪神に3位指名された。今だから言えることだが、私は「こんな繊細な選手が阪神のような人気球団に入って大丈夫だろうか?」と思わずにはいられなかった。
【中学時代の及川雅貴と真剣勝負】
私が初めて及川と出会ったのは、2016年の秋だった。当時、及川は匝瑳(そうさ)リトルシニア(千葉)のエースであり、侍ジャパンU−15代表の中心投手でもあった。雑誌『中学野球太郎』(休刊)の企画で、私は打者として及川と真剣勝負に臨んだ。
私は西東京大会ベスト32という、ごく平凡な球歴の中年男である。エリート街道をひた走る及川は、「なんで自分が、こんなおっさんと対戦しなければいけないんだ?」と困惑したに違いない。
1打席目の初球、及川が投じたストレートがど真ん中に入ってきた。おそらく小手調べのつもりだったのだろう。左打者の私が引っ張り込むと、打球は右翼線へと抜けていった。まさかの三塁打。出会い頭の「ラッキーパンチ」だった。
だが、私は寝た子を起こしてしまった。及川は一気に本気モードになり、比べものにならない剛速球を対角線へと投げ込んできた。縦・横・斜めと切れ込んでくる3種類のスライダーに、こちらを嘲笑うかのようなスローカーブも交えてくる。私は残りの3打席で3三振と、まさに手も足も出ない結果に終わった。
対戦後、及川は初々しい笑顔でこんな感想を語ってくれた。
「打たれてからは気持ちを入れ直して、そこから大会モードで投げることができました」
2 / 3

