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松尾汐恩が明かすプロ1年目の苦悩 「正直、どうしたらいいかわからなくなったことも......」 (4ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi

 そういえばシーズン前、松尾は「自分は注目されればされるほど力を発揮できるタイプ」と語っていたが、まさにファンの熱視線と応援が、悩める若き捕手の背中を押してくれたのだろう。

 今季、個人的に一番うれしかったことはと尋ねると「(9月6日の)ヤクルト戦でのサイクル安打ですね」と笑顔を見せ、逆に悔しかったことは「打てなかったり、うまくリードできなかったり、常日頃から悔しいことばっかりですよ」と苦笑した。

 青年から大人への階段を上がっているこの時期、表情ばかりか身体つきにも変化が見られる。聞けば、入団時より体脂肪は落ち、体重が3キロ増量したという。身体はがっしりと分厚くなり、確実に筋量は増え、プロの身体に近づいているようだ。

「だから打球が飛ぶようになりました。だけど、まだまだ体力をつけないと。秋季トレーニングは身体づくりがメインでしたし、しっかりとこのオフもトレーニングしていきたいと思います。えっ、自主トレですか? 先輩の戸柱(恭孝)さんと一緒にやらせてもらいます」

 明るい声で松尾はそう言った。

 さて2年目の来シーズン、目標は何になるだろう。

「やっぱり一軍にずっといることですね。さらに言えば、試合に出て、活躍することを来年は目指したいと思います。そのためにもオフからしっかり準備して、いい状態でキャンプを迎えられるよう頑張っていきたいと思います」

 理想に掲げる"走攻守揃った新しいタイプの捕手"になるため、松尾汐恩の戦いと歩みは、これからも続く──。


松尾汐恩(まつお・しおん)/2004年7月6日、京都府生まれ。小学1年から野球を始め、中学では京田辺ボーイズに所属し、3年夏はボーイズ日本代表メンバーとして世界大会に出場して優勝。大阪桐蔭高では1年秋からベンチ入りを果たし、2年春のセンバツ大会から4季連続して甲子園に出場。3年春に全国制覇を達成した。高校通算38本塁打を放ち、22年のドラフトでDeNAから1位指名を受け入団。23年9月6日のイースタンリーグのヤクルト戦でサイクル安打を達成し、リーグ特別表彰を受けた

著者プロフィール

  • 石塚 隆

    石塚 隆 (いしづか・たかし)

    1972年、神奈川県出身。フリーランスライター。プロ野球などのスポーツを中心に、社会モノやサブカルチャーなど多ジャンルにわたり執筆。web Sportiva/週刊プレイボーイ/週刊ベースボール/集英社オンライン/文春野球/AERA dot./REAL SPORTS/etc...。現在Number Webにて横浜DeNAベイスターズコラム『ハマ街ダイアリー』連載中。趣味はサーフィン&トレイルランニング。鎌倉市在住

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