松尾汐恩が明かすプロ1年目の苦悩 「正直、どうしたらいいかわからなくなったことも......」 (3ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi

「あの時は、ちゃんとしなければいけないという意識が強く、自分自身にプレッシャーを与えていたような気がします。ミスをしてはいけない、エラーはダメだって深く考えすぎてしまったんです。正直、どうしたらいいかわからなくなったこともありました......。また今永(昇太)さんとかのボールを受けさせてもらっても、一線級の投手は構えたところに確実に投げてきますし、ミスが少ない。つまり打たれたら自分のせいですし、責任の重さというのを感じることができました」

 ドラフト1位ルーキーとして期待に応えなければいけないプレッシャーに押しつぶされそうになったが、松尾はあきらめることなく立ち上がる。7月以降はシーズン終了まで、盗塁阻止率は4割を超え、パスボールもゼロ。はたして、このタイミングでなにが起こっていたのだろうか。

「気負い過ぎなくなったんです。自分はできないんだって受け入れることで、ようやく向き合えたというか」

 松尾のそばにはいつもファームの鶴岡一成バッテリーコーチがおり、捕手として徹底的な指導を受けた。

「どうすればよくなるのか、鶴岡コーチと毎日のように探りながら過ごしました。まだまだ自分は発展途上ですし、とにかく学ぶことが大切。そう割りきることで、スローイングにしてもブロッキングにしても自分が思っていた以上に、前に進めたというか、成長することができたんです。とくにキャッチングは、一番手応えを実感した部分ですね。配球にしてもアナリストの方といろいろと話をして、そういった積み重ねがシーズン後半につながっていったと思っています。ピッチャーとのイニング間の会話もそうですけど、本当にいい経験をさせてもらったし、学ぶことが多かった1年だったと思います」

 そう言うと松尾は、やり切ったような表情を見せた。

【来シーズンの目標は?】

 プロとなり野球漬けの1年間、なにか野球観に変化はあっただろうか。

「心身ともにきつくて、考え込んでしまうこともありましたが、そのなかで、毎日ファンの方々には応援してもらって、声援がこんなに力になるんだって感じたんですよ。応援してもらうことで、疲れが吹き飛ぶっていうんですかね」

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