松尾汐恩が明かすプロ1年目の苦悩 「正直、どうしたらいいかわからなくなったことも......」 (2ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi

 前半戦はプロの速く強いストレートに手を焼いていた印象だったが、シーズンが深まるにつれ、足の上げ方やトップの位置など細かな修正をし、しっかりボールに入っていけるようになった。そう尋ねると、松尾は頷きながら答えた。

「そうですね。やっぱりボールの強さは学生時代と比べて、まったく違うものでした。キャッチングの時でさえ、差し込まれていましたから。最初の頃は、なかなか前に飛ばなくて、甘いボールでもファウルにしてしまう感じで......自分は変化球のほうが合うなという感覚があったんですけど、やっぱり真っすぐを打てなければ勝負になりません。だから後半になるにつれ、速いボールに入っていく工夫だとか、どうすれば振り遅れず打てるのか試行錯誤の日々でしたし、おかげでボールの見え方はずいぶん変わりましたね。速いピッチャーの時はこうしようっていうのが明確になりました」

 松尾は6月後半、一軍昇格して出番こそなかったが、2試合ベンチから先輩たちの戦う姿を見た。そこでも多くの気づきがあった。

「宮﨑(敏郎)さんなど、一軍でやっている選手は、やっぱり甘いボールを一発で仕留める力がすごいなって。自分もそうならなければいけないと、いろいろ考えながらファームでプレーしていました」

【ドラフト1位のプレッシャー】

 そして松尾があげた2つ目の疲労は「心」である。

「キャッチャーとして考えることが多かった1年でした。まず、いろいろなピッチャーをリードしていくうえで、どうやったらベストなパフォーマンスを出させることができるのか。そういう部分で、やっぱり心の疲れというのはあったと思います」

 学生時代とは比べものにならない人数の投手がおり、その特性や持ち球はもちろん、個性豊かな選手たちに寄り添うことは、並大抵のことではなかったはずだ。

 そんなこともあってか、前半戦は捕手として苦労が絶えなかったという。リード以外の部分でも、4〜6月の盗塁阻止率は2割そこそこであり、パスボールも7個と精彩さを欠いた。

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