【夏の甲子園2025】先発完投時代から投手分業制へ 移行がもたらした選手の出場機会と成長のチャンス
指揮官の言葉が変わった。
東海大熊本星翔(熊本)との1回戦で、打撃戦の末に7対10で敗れた北海(南北海道)の指揮官・平川敦は試合後にこう語った。
「投手陣はそれぞれが役割を果たしてくれたと思います。南北海道大会とほとんど同じ形で投手を送り込めたのはよかったかなと思います」
【球数制限から複数投手制が一気に加速】
北海といえば投手育成に長けている一方で、特定の投手への依存が強いチームでもあった。2016年に準優勝した際は、エース・大西健斗が地方大会からほぼひとりで投げ抜き、登板過多の疑念もあった高校のひとつだった。
だが球数制限(2020年から試行実施してきた1週間500球の投球数制限を2025年度から正式に導入)が設けられ、各チームが複数投手で挑むなか、北海も例外ではなかった。ただ平川は複数投手制についてはネガティブで、以前こう語っていた。
「球数制限ができて複数投手を起用しようという意図があって、こうなったわけじゃないんですよ。ただ、信用できる投手がいなかっただけです。また信頼できる投手が出てきたら、ひとりで戦うと思いますよ」
そんな指揮官が今大会、自信を持って複数の投手を起用したのだった。こうした複数投手で戦う流れは、球数制限のルールができてから一気に加速した印象だ。
制度導入当初は「ルールが軽すぎる」と多くの識者の批判があったが、いざフタを開けてみると指導者たちが頑張った。投手育成に本腰を入れ、起用に幅を持たせるようになったのだ。
球数制限の導入は、ひとりの投手の負担を軽減すると同時に、控え投手の登板機会を増やすことにもつながった。今大会の北海のように、たくさんの投手が登板し、それぞれが貴重な経験を得た。これが高校野球界に起きた大きな変化といえよう。なにより、そうした投手たちが次なる舞台でさらなる成長を目指し、夢を語るようになった。
1 / 5
著者プロフィール
氏原英明 (うじはら・ひであき)
1977年生まれ。大学を卒業後に地方新聞社勤務を経て2003年に独立。高校野球からプロ野球メジャーリーグまでを取材。取材した選手の成長を追い、日本の育成について考察。著書に『甲子園という病』(新潮新書)『アスリートたちの限界突破』(青志社)がある。音声アプリVoicyのパーソナリティ(https://voicy.jp/channel/2266/657968)をつとめ、パ・リーグ応援マガジン『PLジャーナル限界突パ』(https://www7.targma.jp/genkaitoppa/)を発行している




























