藤浪晋太郎が信頼を寄せる大阪桐蔭の元チームメイトの波瀾万丈 「センバツで4番、夏はスタンド」
大阪桐蔭初の春夏連覇「藤浪世代」のそれから〜小池裕也(前編)
藤浪晋太郎のメッツ移籍が球団から公式に発表される3日前、一通のメールが届いた。
「日曜日に無事アメリカへ旅立って行きました。もちろん、土曜日までしっかり練習しました!笑」
役割を終えた安堵感と一抹の寂しさが伝わってくるこのメールの送り主は、小池裕也。ここ数年は会社勤めの傍ら、時間の許す限り藤浪のオフの練習パートナーを務めてきた。藤浪とは大阪桐蔭時代のチームメイトであり、高校野球に詳しいファンなら2012年の"春夏連覇"の「春の4番」として記憶している方もいるだろう。
この数日前、直接話を聞く機会があり、「全身筋肉痛です」と軽く足をさすりながら小池は現れた。小池に会うのは、藤浪がアスレチックスからオリオールズへ移籍した直後となる昨年7月以来。前回も今回も、藤浪の話題から始まった。
オフに帰国した藤浪晋太郎(写真左)の練習パートナーを務めた小池裕也氏/写真は本人提供この記事に関連する写真を見る
【帰国後の藤浪と多くの時間を共有】
メジャー1年目の戦いを終えた藤浪が昨年10月に帰国してからの約4カ月、小池はかなりの頻度で行動をともにしていたという。大阪桐蔭のグラウンドに監督の西谷浩一をはじめ指導者に帰国のあいさつをした際も同行した。
藤浪のリクエストで『王将』の餃子とビールを堪能した時も、澤田圭佑(ロッテ)を交えて小池の実家で母の手料理を味わった時も、年末にかつてのチームメイト数人とゴルフでリフレッシュした時も......常に小池は藤浪と一緒だった。
そして年が明けると、大阪市内の街中にある公園で指導。凧上げを楽しむ親子やボール遊びに夢中になっている子どもたちのそばで、メジャーリーガーのストレッチ、ランニングに付き合った。藤浪らしい奔放な姿を思い浮かべていると、「見てください。わっるい顔してるでしょ?」と、小池は携帯電話で撮影した動画を見せてきた。
そこに映っていたのは、阪神二軍の本拠地・鳴尾浜でのトレーニング風景だ。歯を食いしばりベンチプレスを上げる小池を、見下ろしながら笑顔でいじる藤浪の姿が映し出された。自己最高だという体重95キロの重量感たっぷりのボディーの上に乗る色白の顔をニコニコさせながら、小池がぼやく。
1 / 6
著者プロフィール
谷上史朗 (たにがみ・しろう)
1969年生まれ、大阪府出身。高校時代を長崎で過ごした元球児。イベント会社勤務を経て30歳でライターに。『野球太郎』『ホームラン』(以上、廣済堂出版)などに寄稿。著書に『マー君と7つの白球物語』(ぱる出版)、『一徹 智辯和歌山 高嶋仁甲子園最多勝監督の葛藤と決断』(インプレス)。共著に『異能の球人』(日刊スポーツ出版社)ほか多数。